豊島逸夫の手帖

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「過剰流動性」の正体は、問われるバイデン経済政策

2020年12月30日

金市場にも株式市場にも流入する「過剰流動性」の正体は何なのか、追跡調査してみた。以下はそのレポート。

米国の個人給付金を一人600ドルから2000ドルに増やせとのトランプ大統領の要求に民主党は同意したが、財政保守派が多い共和党に反対意見が目立つ。29日には「第三の大統領」とまで言われるマコーネル上院共和党院内総務が異議を唱え、増額案は宙に浮いた。日本時間午前2時半頃に同報道が流れるや、ダウ平均は一気にプラス圏からマイナス圏に沈んだ。

バイデン政権移行チームはこの個人給付金増額に加え、大統領就任後、第5弾の大型コロナ対策追加予算も作案中とされる。
ここで注目されているのは、複数回にわたる給付金が就業者で所得も減っていない人たちへも給付され「過剰流動性」に変異していることだ。
バイデン氏の経済顧問役となっているラリー・サマーズ元財務長官は「この中間層の人たちはコロナ禍でも収入の道は閉ざされず、おカネの使い道が減っているのが実態だ。」と指摘している。

そこで紹介されている資料がJPモルガンのレポートだ。同行の当座預金残高が、コロナ前に比し増加していることを示している。低所得者の当座預金残高も増加傾向にあるが、この部分はいずれ生活資金に充当されよう。一方、低所得者より高い収入の中間層の当座預金残高も増加しているが、ここでは支出されるはずであった資金の滞留傾向が見られる。更に消費者金融、住宅ローン、奨学金などの返済猶予措置により、本来支出すべきであった資金が当座預金に積まれている可能性も指摘されている。

その結果1.5兆ドル規模が「過剰貯蓄」となり、マーケットにも「過剰流動性」として流入している。ロビンフッドマネーはその最たる事例と言えよう。
サマーズ氏は「もし2000ドルの給付金が支給されたら、家計所得は通年の15%増となろう。」と述べている。
2021年は、対コロナ追加支援金・給付金による過剰流動性が市場に流入加速するシナリオもウォール街では語られる。

なお、財務的に余裕のある中小企業も、PPP(中小企業の給与補填策)の恩恵を受けて得た資金を投資に回すケースが多いと指摘されてきた。一方、FRBが一般企業に融資する異例の支援策は、商業銀行経由で事務も煩雑で審査も厳しく、結局利用事例が少なかった。その未使用残額に対しムニューシン財務長官は「返還」を要求して、パウエルFRB議長との間で軋轢が生じた。

この流れを引き継ぎ、バイデン次期政権が、いかに困窮している個人・企業をピンポイントで救済するか。その政策手腕が問われるところだ。

なお、株式市場の視点では、所得再配分政策として富裕層の株式売買益に39%超課税するバイデン増税が懸念要因となっている。1月5日のジョージア州上院決選投票で争われる2議席を民主党が取ると所謂「ブルーウェーブ」となり、増税案実施の可能性が高まる。
29日にマコーネル共和党上院総務が待ったをかけた個人給付金増額案も、実はジョージア州決選投票に大きな影響を与える政治要因となっている。2名の共和党候補が有権者の反発を危惧して、2000ドルへの給付金増額「賛成」に回ったのだ。
600ドルか2000ドルか。
バイデン政権の政策論議、そして2021年予測に於いても注目すべき事案である。

金と株と同時上昇の背景にもなっている。