豊島逸夫の手帖

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恒大危機、正念場

2021年1021

ドル長期金利は1.6%を超え上昇。外為市場はドル高。
金には強い逆風なれど、とりあえず1780ドル台を維持できているのは、インフレ懸念が当初の想定より長引くとの観測が益々強まっていること。供給網の混乱や人出不足による賃金増が価格に転嫁される状況は「一時的」とは言えないとの見方が強まっている。これは金には追い風。
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更に、恒大株が香港市場で売買停止になっていたが、本日再開されたものの10.5%安。傘下の不動産管理会社・恒大物業集団の売却交渉に頓挫して資金繰り目途立たず。
そして恒大は発行済ドル建て債の利払いができず、定められた30日間の猶予期間に入っている。市場のデフォルト観測は強まる。
恒大も開き直ったかのように「資金繰り改善の難しさや不確実性を考慮すれば、財務上の義務を果たす保証はない」。平たく言えば、「ないものはないんだ。どうにもならん。」とのメッセージ。

但し、中国の場合は社債がデフォルトと言っても即、事業停止とはならない。事業は継続される。日本のような「手形不渡りで銀行取引停止処分」もない。最終的には中国政府が資金繰りを何らかのかたちで支援するだろう。経済担当副首相も一部の大企業のデフォルトリスクを「適切に処理する」と述べている。そして法的整理は中国では時間がかかる長期戦になる。

従って、恒大破綻リスクは「制御可能」だが、その影響が中国GDPの約3割を占める不動産セクターに波及することで、中国経済悪化が加速するリスクが懸念されるところだ。GDP成長率も今週発表の4.9%から更に下落する見込み。但し習近平も財政・金融面で緩和政策を繰り出すであろう。市場はそこまで読み、それほどバタついてはない。暫時リスクオフになれば金には多少の上昇圧力となるか。

さて、コロナ感染が日本では激減。8月にピークに達する前に相場感覚で見ればいずれ急落するよと書いたが、その相場感覚では今が底で、冬にかけて再び急増すると見る。筆者は専門的医療の知見はないから、これは単なるマーケット感覚に基づく読みだけどね。ウイルスの波は実に分かりやすい正規分布の波を繰り返している

2021年