豊島逸夫の手帖

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嵐の前の静けさ、終焉を告げる金急騰

2021年10月14日

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異常なまでに膠着状態が続いていた金市場で、蓄積された売買エネルギー噴出が顕在化した。

キッカケは9月の米国消費者物価上昇率。予想されたこととは言え年率5.4%と前月の高水準を維持した。世界的な供給網の混乱によるコストアップと9月米国消費者の旺盛な消費性向が共振してインフレ率を高めている。パウエル議長は想定よりインフレが長引いているが来年には落ち着くと語る。それを市場は信じていない。高インフレは来年まで続くと見ている。今回の米国消費者物価上昇の内訳を詳細に見ると、かなり広範囲に拡散している。この物価上昇は米国消費者に転嫁されたわけだが、それでもめげずに消費を続けている。企業にとってはコストアップだが、その分はしっかりと取引先に転嫁している。雇用統計でも確認されたように人出不足の中で賃金は上がっている。

こうなるとこれまで傍観してきた金市場も「いよいよインフレヘッジとしての金の出番か」と臨戦態勢に入った。KITCOグラフ緑線は一気に1790ドルを超え、一日の上げ幅としては30ドルを超える。
しかも円安基調ゆえ、円建て金価格には上昇圧力がかかる。
テクニカルに見れば、次は1800ドルの壁を超えられるか。
ここはかなり厳しい。金投機筋の動き次第だが、ひとまず1800ドル前後で利益確定売りが出やすいであろう。金市場内には依然弱気派も少なくない。同日発表されたFOMC議事録でもテーパリングは2022年半ばまでに終え、次は利上げ検討の段階との議論が明記されている。ここは冷静な見極めが必要だ。

2021年