豊島逸夫の手帖

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米消費者物価上昇率6月5.4%上昇の意味

2021年7月14日

米国の物価上昇が加速しています。5月年率5%に次ぎ、6月は5.4%に続騰。13年ぶりの高水準です。
いよいよインフレ到来かとも言われますが、実態はコロナ後の経済急回復による一時的現象と筆者は見ます。
最大の要因は中古車価格の上昇。更に異常気候による食料品高、原油高、家賃上昇。更にこれまで安値に沈んでいた航空運賃の急回復。どれを見ても今後1年も続く要因には見えません。
現在の「インフレ的現象」が持続するか否かは、一言で言えば賃金も上がるか否かにかかっています。
やさしく説明してみましょう。
今、例えば1000円でケーキが3個買えるとします。
このケーキの価格が5%上がれば、1000円では3個買えなくなります。
でも給料が1100円になれば、楽勝で3個買えますよね。
今の米国バイデン政権が兆ドル単位の財政ばら撒きをやっているのも、これで経済が上向き、経営者が賃金アップを容認できるようになれば、先の例の1000円の購買力は維持できるという考えに基づくのです。
但し、米国経済がコロナを克服して本格回復するか否かは未だ分かりません。特にデルタ型変異株の拡散は不気味でFRBパウエル議長も重要視せざるを得ないほどになっています。
仮にこのまま1000円ではケーキ3個が買えない状況が続けば、不景気なのに物価だけが上がるスタグフレーションという最悪の結果になりかねません。スタグフレーションに勝者なし。投資でも全員負けの最悪シナリオです。

そこで最悪回避のため、米国政権は最終的にどう動くか。
とにかく米国民に1000円の購買力は維持できて、なお増えている印象を与えなければ、2022年の米中間選挙、更には2024年の大統領選挙は勝てないでしょう。
結論から言えば、マネーばら撒きを垂れ流しにして、金回りは良い印象を与えるという「マネーインフレ政策」しか選択肢はないと思われます。マネーばら撒き放題でインフレになり、通貨の価値が棄損すれば、政府の借金の価値は目減りします。インフレはおカネを借りる身には朗報なのです。当面の財政破綻も回避できます。しかしツケを将来の世代に残すだけの政策です。

このような状況を考えれば、今年は未だインフレが一過性か否かの議論が続くと思われますが、その間インフレの種はばら撒かれていることになります。
臨界点は3年後でしょうか。
その対策としてインフレヘッジで金を徐々に買い増してゆくことも、長期的に続けてこそ意味があるのです。

2021年