豊島逸夫の手帖

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中国に「買い負け」、カニの国内値段急騰

2021年625

ズワイガニや銀ムツなどの高級海産物が中国の高値買い攻勢で、日本国内での値も庶民の手が届かない水準まで急上昇しています。中国側は高値で仕入れても国内で売り捌けるからです。日本人にとっては高嶺の花。中国人なら支払える価格帯。中国人の購買力と円安のダブル効果が働いています。更に資源乱獲の影響も。私は銀ムツの西京漬けが好物なのでアラアラという感じです。
こういう事例は海産物に限らず、これから増えそうですね。

価格と言えば、今市場で話題のインフレ問題。
米国の5月消費者物価上昇率は年率5%に達しました。
とは言え、その内訳を精査すると中古車価格急騰が強く影響しています。
半導体不足で新車生産が減少。一方個人はコロナ感染を避けて公共交通機関よりマイカーでの出歩きを選好。
更に、レンタカー業者の中古車まとめ買いも注目されています。
通常レンタカー業者は新車をまとめ買いして、一年間レンタカーに使った後で、オークションで中古車市場に売却します。ところが新車不足なので買いが中古車に向いているわけです。
加えて、個人の側ではコロナ禍のレジャーとして、レンタカーを借りて気楽にドライブが人気なのです。

このような理由で消費者物価上昇率が上がっているというのは異常な状況ですね。一過性だと思います。経済が元に戻れば価格上昇も鎮静化するでしょう。
なお、「ベース効果」というのですが、昨年同月がコロナ真っ只中で買う需要も急減した時期なので、そこと比較すると大きな上げ幅になります。この「ベース効果」は7月には剥落するでしょう。
ですからインフレトレードと称して、短期売買で「インフレヘッジ」と称し、金を買うという行動も一過性と思われます。
同じく「インフレヘッジ」とされたビットコイン価格にも大きな変調が生じています。

一方、長期的なインフレ懸念で金を買う動きは逆に増えてゆくでしょう。来年初めくらいから量的緩和縮小が始まりそうですが、増加幅を減らしたところで、8兆ドルに達する過剰流動性(余剰資金)は「根雪」の如くそう簡単には減りません。経済成長が低水準で定着する傾向の中で(コロナ後のV字回復も一時的)、カネの量だけ、ばら撒きっぱなしで放置されれば、モノの名目的値段は上がりますよね。通貨の価値が減るとも言えます。これが長期的インフレ懸念。

なお、ドル金利が上がらないことも注目されます。やはり経済が低インフレ体質化しているのです。それでも今回コロナ対策でばら撒かれたおカネの量も未曽有の規模なので、さすがに低インフレ体質も徐々に変わってゆくと思います。これは長期の話。一方「今年」に関して聞かれれば、インフレは一過性と答えています。コロナ自粛で我慢していた需要がワクチン接種で一気に噴出する、所謂ペントアップ需要は一過性でしょう。既に日本でも7月の連休はGoTo並みの航空券予約が入っているとの記事も出ています。
やはり経済回復はまず外食産業。そして国内旅行となりそうです。

2021年