豊島逸夫の手帖

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パウエル、イエレン発言、市場の話題に

2021年7月16日

昨晩15日は、まずパウエルFRB議長が議会銀行委員会で議員の質問に答えた。最も頻繁だった質問は「インフレはあなたの言うように本当に一過性なのか」。議員たちからは選挙区の消費者たちが消費者物価上昇で悲鳴をあげている。何とかせよとのニュアンスが伝わってくる。

パウエル氏は「消費者物価が年率5%のペースで上昇していることは驚きだ。中央銀行として決して心地よい状況ではない。」と語った上で「それでも経済回復過程の一過性現象」との見方は変えなかった。もしこの判断が間違っていることが明らかになれば「躊躇なく金融政策を緩和から引き締めに転換する」意志も明らかにした。

なお、テーパリング(量的緩和縮小)については積極的(active)に検討・議論していると答えている。市場もテーパリングに関しては織り込んだと言えよう。

そのパウエル証言から2時間後に米CNBCテレビにイエレン財務長官が出演。「物価上昇は数か月(several months)続く」と語り、しかしパウエル議長と歩調を合わせるかのように「一過性」と断じた。

昨晩、もうひとつの注目点は米10年債利回りが一時1.3%の大台を割り込み、1.2%台まで急落したこと。その理由は明確に指摘できないので「謎」とされる。筆者は単なるポジション調整で、あまり考え過ぎない方が良いと思う。市場は夏枯れ状態で取引も薄い。とは言え消費者物価上昇率が年率5%を超えた時にドル長期金利が下落するという現象は不気味だ。金利は経済の体温計ゆえ最悪「スタグフレーション」の影もちらつく。物価だけ上がり景気は良くならないという状態のことだ。筆者は、それは無いと思う。

株式市場では長期金利が下落したのにハイテク株が売られるなど、市場の法則に反する値動きが目立つ。

国際金価格も1830ドル台で変わらず。上記の状況で方向感が不透明だ。

さて、いよいよ五輪開催時に東京で感染爆発という最悪シナリオになってきて、日本株もデルタ型不安で売られる状況。医療専門家が警告したシナリオ通りの展開だ。今は日本中どこでも特に理由もなく感染してもおかしくないような状況と言える。医療用マスクをして十分に感染対策したつもりでも、どこかに隙があって感染という事例が20~50台中心に急増中だ。こうなると日本人選手の金メダルラッシュで閉塞感を打開して、五輪後に出直すことを目指すしかない。行動制限による感染防止は失敗した。あとはワクチン国内供給再開を願うのみ。日本人として腹を括るしかあるまい。責任者云々はコロナ最悪期が過ぎてからの話だ。今更首相や担当相を変えたところで事態がここまで悪化しては、誰がなっても「妙案」など無い。昨日の本欄で書いたことだが、自分の命は自分で守れということだ。

2021年