豊島逸夫の手帖

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恒大、部分デフォルト認定

2021年12月10日

格付け会社フィッチが、中国恒大集団の長期外貨建て発行体格付けをシングルから債務不履行を意味する「RD」に引き下げた。織り込み済みで市場の強い反応は見られない。ジワリ不安感は漂う。
中国では債務不履行になっても債務整理期間は長引き、その間営業は続けられる。

恒大のケースは「大きすぎて潰せない」から、地方政府が関与して、国策企業も巻き込み、債務不履行宣言されても実質的なステルス救済となりそう。中国流の債務不履行は、中国共産党の指導の下で長い期間に亘って進行する。「共同富裕」構想のもとでは巨大企業の救済は国民の反発を買う。それゆえ見せしめ的に企業トップを何らかの理由で告発・拘束することになりそう。

現状の救済順位は、まず恒大建設マンションを全額先払いで購入した人たち。完成物件を引き渡すか、全額返金するか。これをやらないと社会不安を引き起こしかねない。中国共産党が最も嫌うシナリオゆえ、まず救済せねばならない。それに比べ、外貨建て社債の保有者(主として外国人投資家)は優先順位が低い。既に同社債は額面の8割減くらいの価値まで下落している。

マクロ的には不動産関連セクターが中国GDPの29%程度を占め、個人資産運用では不動産が半分以上の割合なので、不動産セクターバブルの影響は大きい。不動産バブルを防ぐために、これまでは不動産取引に様々な規制をかけてきたが、このままでは不動産セクター不況が中国経済全体の足を引っ張りかねない。そこで中国人民銀行は銀行の預金準備率引き下げという追加的金融緩和策を発表した。この追加緩和は不動産バブルが再燃しかねないリスクを孕むので苦肉の策である。今回の中国人民銀行の追加緩和は、人民銀行は反対であったが、共産党からの指示でやらざるを得なかった。

不動産バブル再燃を危惧する中国人民銀行に党が政治的に介入して、不動産業のテコ入れを重視したのだ。同時に中国人民銀行の幹部が「職務怠慢」で吊るし上げられたようだ。現政権は、巨大化する中国の大企業が党の支配の及ばぬところで事業を拡大していることを懸念して、片っ端から解体に動いているところだ。中国人民銀行も政治的に独立することは、欧米と異なり中国ではあり得ない。

恒大問題は中国のかかえるジレンマを次々にあぶり出してゆく。

さて、今日の写真は若狭カレイ一夜干し。ほっくりして身が厚く、上品な旨味。今が旬。甘塩でゆっくり干しあげる。じっくり焼いて、こんがりキツネ色がついた頃が一番美味。

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2021年