豊島逸夫の手帖

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本当にインフレか

2021年513

注目の4月米国消費者物価上昇率は4.2%(年率)と発表された。これほど高水準の数字は殆どの市場関係者が想定していなかった。非常に重要な経済指標だがマーケットは未だ消化しきれていない。

米国債券市場では10年債利回りが一時は4月5日以来となる1.7%に乗せる局面もあった。結局、前日比0.07%高い1.69%で引けている。

一方、プロの視点では物価連動国債から算出される今後10年間の予想インフレ率(BEI)は2.56%(年率)と、前日に比し0.03%の上げ幅に留まった。

結局、名目金利の上昇幅が予想インフレ率の上昇幅を上回り、12日の実質金利は上昇した。それゆえ金は下落した(KITCO24時間グラフ緑線参照)。
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そもそもインフレとなれば実質金利は下落するものだ。
それゆえマーケットは未だインフレ到来を信じ切れていないのだ。市場心理としてインフレの足音に怯えている感じだ。
金価格は名目ドル金利高=ドル高に反応して下げたのだ。
「インフレは一時的」との見解を頑なに固持するパウエルFRB議長が隠然とした影響力を維持している。

株価の下げも漠然としたインフレ=テーパリング不安により異常に増幅されている感がある。
長年続いた経済のディスインフレ体質が本当に変わるには未だ時間が必要となろう。
消費者物価上昇率4%台が3か月も続けば、いよいよインフレへの潮目の変化となるかもしれない。

中期的な視点ではインフレ懸念が金価格を引き上げるシナリオとなろう。今後は期待インフレ率と名目金利上昇率のどちらが早く上がるかに注目したい。

2021年