豊島逸夫の手帖

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「尖閣」とは何処だ?米国市場も懸念共有

2021年3月17日

「私のマップにはSENKAKU諸島が見当たらない」
「北朝鮮のナンバー2は最高指導者の妹という立場の女性なのか」

バイデン政権新国務長官と新国防長官、初の外遊先は日本、そして韓国との報道はNY市場にも流れ注目された。その後に予定されているアラスカでの米中外交トップ級会談の件は既に知られていた。

NYタイムズ紙は尖閣諸島の写真入りで日中領土問題を紹介。多くの市場参加者が沖縄海域での紛争要因を知った。海警法という具体名は出ずとも、中国による軍事介入を正当化する法制整備も理解した。バイデン政権が中国を名指しで強く批判したことも「口撃」の一斉射撃とサプライズ視された。

更に米国主要メディアは、このタイミングで平壌発、米国への警告メッセージも報道した。見出しに使われたのが「北朝鮮、トップの妹、米国を悪臭呼ばわり」発言。

北朝鮮最高指導者の妹、金与正氏がバイデン政権を名指しで「我が国に(火薬の)臭いを放つ」、「米国が今後4年間、静かに眠りたければ悪臭を控えよ」と強い語調で非難と顔写真入りで報道された。米韓軍事演習へのけん制とも解釈される。「安らかな睡眠」に言及したのは、トランプ前大統領が「北朝鮮ミサイル開発を抑止できて、米国民は安らかに眠れる」とツイートしたことがあるからだ。

バイデン政権の北朝鮮政策は、これまでじっくり事情を見極めてから決めるとの構えであった。「舟を揺らせ余計な波を立てることは控える」と理解されていた。今年2月に米国司法省が北朝鮮人をサーバー攻撃容疑で立件。北朝鮮を荒い口調で非難した時も、ホワイトハウスは司法省の「独走」に釘を刺した。それゆえ北朝鮮側からの「口撃」に対する反応が注目される。

折から米国市場で、日本は最大の米国債保有国との事実、そして日本株への関心が徐々に高まりつつある矢先。日本の抱える地政学的リスクとしても気になる展開になってきた。

それにしてもバイデン政権の日本厚遇をどう理解すればよいのか。深読みも進む。トランプ氏と安倍氏の仲良しぶりは「個人的に気が合うのだろう」と見られていた。しかし菅首相は米国で未知数的存在だ。

市場の見解としては、韓国が中国を挑発する行為には慎重であることが指摘される。経済的な中国依存度が高く、北朝鮮との交渉の仲介役にもなるからだ。それゆえ韓国は日本、米国、インド、オーストラリア4か国の「クワッド」による中国囲い込み作戦への参加を控えた。「特定の国を排除するフォーラムには参加しない」との韓国高官発言も引用される。

ここから中国が韓国を米国側から引き離せば、極東の最後の砦は日本となるとの見立てが出てくる。
とは言え日本企業の中国依存度も高い。それゆえ改めて日本株市場での「中国銘柄」を「要経過観察」として探る動きも生まれている。
単に「日本株」という範疇から更に踏み込み、銘柄選択の段階に入っていることを示す現象でもある。

外為・商品市場では、台湾・北朝鮮有事が視野に入るようなことがあれば、「レパトリ円高」(海外投資マネーを日本国内に戻す動き)や「有事の金買い」のシナリオも無視できない。

「米国内では北京オリンピックボイコットという極論まで一部議員の間で出始めている。その場合日本の立ち位置はどうなるのか。五輪銘柄はあるのか。」
日本の経済界も厳しい選択を迫られる可能性がヒシヒシと伝わってくる。

2021年