2021年7月7日
昨晩のNY市場では米供給管理協会(ISM)発表の6月非製造業総合景況指数が60.1。これは前月の64、更に市場の事前予測中間値63.5も下回る数字。米国経済の活動拡大ペースが鈍化していることを意味する「悪い金利安」だ。金利は経済の体温計と言われる。
今回の指数では雇用の指数が縮小に転じ、新規受注の指数も低下した。但し外食、宿泊、旅行など、サービス業への需要は底堅いと言える。対照的に不動産と農業部門が弱い。
この「悪い金利安」は筆者の想定外の展開で今後も続くのか注視しているところだ。筆者が想定していたのは「悪い金利高」。米国債が超増発され、欧州金融危機の時のギリシャ国債のように買い手が付かず、国債利回りは急上昇するというシナリオだ。今年も米国10年債利回りが一気に1.7%まで跳ねた時にはいよいよ来たかと思った。しかしその後ドル長期金利はじり安傾向に転じている。
結局、現時点での米国経済は、コロナ禍から再開が急速に進むことで生じる経済過熱(インフレ)リスクと、物価も金利も上がらない構造的経済停滞(ディスインフレ)リスクの狭間で揺れている。
国際金価格も金利上昇による下落圧力と、金利下落による上昇圧力に挟まれ一進一退だ。
昨晩も一時は1800ドル台を回復したものの、その後の買いが続かず結局1790ドル台で引けた(KITCOグラフ緑線参照)。示唆的な市場展開である。
なお、昨晩はインド株リスクも改めて意識された。
ワクチン接種が最も進んでいるとされるイスラエルが、ファイザーワクチンの対インド型変異株効果は通常の90%台から60%台に落ちると発表したことが材料視された。イスラエルではワクチン接種にも関わらず、ここにきてインド株の感染が急増中だ。但し重症者数は変わらないので、重症化リスクを減らす効果は確認されたと言っている。
これは日本人にとっても他人事ではないね。仮にワクチンの変異株感染減少効果不十分とされれば、今の「やっとコロナから解放される」という高揚感も一気に冷めてしまう。日米株価も昨日から今日にかけて冴えない。こんな理由で仮に金価格が安全資産買いで上昇してもちっとも嬉しくない。
まぁ今後の要経過観察処分としておこう。