豊島逸夫の手帖

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金、中国需要の回復鮮明、現地価格にプレミアム

2021年2月16日

本日の日経新聞朝刊商品面に首題の記事あり。

この記事のポイントは、上海の現地現物金価格水準が世界標準のロンドン現物金価格に比し割高になってきたこと。これは現地で現物買いが増え、需給が締まってきたことを示す指標だ。この指標が、国際金価格が史上最高値を更新した昨年8月には、オンス当たり100ドルを超えるディスカウントで需給が大幅に緩んでいることを示していた。それが今や10ドルほどのプレミアムまで改善してきた。

今後、仮に金価格が1700ドルまで下落すれば、このプレミアム幅が拡大するは必至だ。

それゆえ記事中に筆者コメントとして「直近安値の1700ドル台に接近する局面では値ごろ感から実需の押し目買いの動きも出やすく、相場の底値を形成している」と記されている。

今やETFの現物金残高に市場の注目が行く傾向があるが、中国・インド・中東(ドバイ)などの現物市場の買いは地味だがボディーブローの如く効く。トレーダー目線では一日の購入量がヘッジファンドと比し少ないのでとかく軽視しがちだが、通年で見るとズッシリ効くものだ。昨年はコロナ・ロックダウンで例外的であったが、通常年では年間金生産量の少なくとも半分、安値圏だと7割近くも中国・インドの二か国で買い占めてしまう。それも徹底した安値狙い(バーゲンハンター)なのでレンジの下値圏を形成するのだ。

これが万が一1500ドルまで下がろうものなら現地の店頭に列ができるほど潜在需要がマグマの如く蓄積している。とかくNY発のニュースにばかりに目が行くのだが、新興国発のニュースにも目配りが必要だ。なお国際金価格が2000ドルに接近すると一転、リサイクルの売り戻しが増えることが予想される。この場合現地金価格はディスカウントになろう。それゆえ筆者は今年の金価格レンジ予測を1700~2100ドルと想定したのだ。このレンジの中で金ETFにマネーが出たり入ったりしてボラティリティー(価格変動性)を高める。

なお、中国の文化的金選好度の高さを示す写真3点。いずれも筆者現地撮影。

まず60億元紙幣!1949年、中国で起きたハイパーインフレ。写真下部の丸窓にお米が一握り。60億元の購買力を示す。そもそも人民元紙幣への不信感が未だに根強く、金を志向する傾向が強く残るのだ。

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そして中国最大の商業銀行ICBC(中国工商銀行)の創立当時の支店風景を再現した蝋人形館。その原点は17世紀上海の金銀両替商であった。それゆえ現在でも支店で「中国黄金文化」に関する展示コーナーがある。これらは筆者がこれまでセミナーで使ってきた写真だが、最近新たな市場参加者も急増しているのであらためて掲載する。

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さて、日経平均は3万円突破後、続騰。

「金は世界の経済政治情勢を映す鏡」と筆者は主著「金を通して世界を読む」で強調した。金市場だけ見ていても、金価格動向は掴めない。投資においても、金だけに投資では単なる投機に終わる。ポートフォリオに株・債券・外貨があって、初めて金のリスク分散効果が発揮される。常にマクロの視点で各市場を複眼構造で見なければならない。それゆえ本欄でも金だけという狭い世界の話ではなく、できる限り主要市場、特に株とドルと金利については詳説している。筆者が独立後「マーケットアナリスト」という肩書で活動しているのも、全体の市場の中での金を見るという意味が込められている。今では株やドルについてのコメントも増えてきた。

今朝は産経新聞朝刊経済面でも日経平均3万突破についてコメントした。↓

https://www.sankei.com/economy/news/210215/ecn2102150024-n1.html

2021年