豊島逸夫の手帖

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「総裁決定で売り」海外勢の読み的中、2匹目の鰌あるか

2021年10月6日

金市場は1700ドル台半ばで行ったり来たりの展開だが、株価は連日大きく動いている。

そして今回の日本株政変ラリーだが、結局日経平均3万円台を維持できず、前半も後半も外国人投機家主導の展開になった。まさに本欄9月9日付け『外国人投機家、「総裁決定で日本株売り」の思惑も』に書いたシナリオが現実になった。

あの時点では日本株を手掛ける外国人投機筋が、しきりに自民党総裁選挙日の9月29日を確認してくるので、所謂「噂で買ってニュースで売る」という常套手段が透けていた。

それにしても彼らでさえ、日本株には未だにこのような「原始的」とも言える短期売買手法が通用することに驚いているのではないか。筆者がスイス銀行チューリッヒのトレーディングルームで最初に叩き込まれた常套手段なのだから古典的と言える。短期売買は基本的にゼロサムゲームだ。誰かが勝てば、誰かが負ける。今回も結局日本勢が指をくわえる中で、外国勢が「おいしい部分」をさらって行ってしまった。株式売買統計が発表され、海外投資家の買いが1兆円を超えたと報道される頃、既に彼らは売り手仕舞いの出口模索の段階にあった。

海外大手年金基金などの良質なマネーは首相が突然退陣を表明したものの次期首相が未定の段階では傍観の姿勢に徹していた。彼らは単なる「変化の期待感」だけでは動かないし、動けない。

それにしても日本の株式市場はいつになったら「外国人投資家という黒船襲来」の呪縛から脱却できるのだろうか。「貯蓄から投資へ」金融リテラシー向上の必要性が語られて久しい。株式投資最前線とも言えるネットセミナーでも、参加者の多くは日本株ETFのレバレッジ型を使い、逆張りか順張りかの二択という「投機」形態だ。
質疑応答でも「会社情報」をじっくり読み込んで銘柄選択するというオーソドックスな発想が薄く感じられる。

日本人の機関投資家も相変わらず「赤信号、皆で渡れば怖くない」という心理が強く働く。個別セッションに講師役で招かれる時でも最初の質問は「よそさんは、どうなんでしょうか」。
多数派が株を買って、仮に値下がりしたとしても「しょうがない」と免責される。悪夢は「我が社だけ、乗り遅れた」、或いは「当社はフライングしてしまった」というケースである。
そこで筆者の役割は「専門家に意見を聞き、いつでも動けるように鋭意準備中であった」と社内ファイルに会議記録として残しておくという「アリバイ作り」にあるのかとも勘ぐってしまう。

さて、岸田政権にはいきなり株安の洗礼。マーケットは経済政策が成長重視より配分重視とされるところが気になるようだ。どっちにせよ「躍動感のある政策が出てこない」と筆者は冷ややかに見ているのだが。
対中経済政策も日本は何とか「損を最小限に留める」経済外交的戦略が必要だ。
岸田政権の先が読めないからこそ、資産運用は金も含めて全天候型ポートフォリオを組むことが益々重要になろう。特に現段階では株への依存度が高過ぎると感じている。

さて、今年の札幌サテライトオフィスではコロナ禍でオフィス内のイートインで旨いモノ食べ放題だったよ。
まず、稚内のウニと大間のマグロ。漁連などで仕入れ、東京と比し半額で鮮度は高い。
そして、ウニシリーズは利尻から余市まで。
ウニ評論家になった感じ(笑)。

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2021年