豊島逸夫の手帖

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今週の注目点、イエレン&パウエル議会での共演

2021年3月22日

FOMC前にはFRB幹部が公的発言を控えるブラックアウト期間が設定されているので、今週は月曜から木曜まで、その反動の如く要人発言が目白押しである。
特に23日(火)、24日(水)には議会上下院でパウエルFRB議長とイエレン財務長官(前FRB議長)が証言する。23日には地区連銀総裁の講演も数多く、さながら今注目の金利の世界のスーパーチューズデーとなりそうだ。
以下、今週予定されている要人発言予定と米国債入札をまとめた。
(日時は全てNY時間)

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市場の注目は長期金利急騰・テーパリングに関する発言に尽きる。
特にイエレン氏は米国債発行元、パウエル氏は購入者という関係にある元同僚である。イエレン氏が「財政は大胆に Act Big!」と説けば説くほど市場では経済過熱リスクが意識され、FRBテーパリングの可能性が議論される。パウエル氏がゼロ金利政策継続を維持すれば、イエレン氏の立場では米国債による資金調達コストが低水準に抑えられる。更にイエレン氏側では1.9兆ドル規模のコロナ救済財政出動に続き、景気浮揚策として兆ドル単位のインフラ投資案も控えている。これはパウエル氏へのテーパリング圧力を強める。
FOMC内部でもテーパリングに関する意見の相違がドットチャートにより明らかになっている。先週発表された最新FRB経済予測では2022年利上げ支持派が4名、23年は7名に増えていた。地区連銀総裁講演では誰が「タカ派」なのか「魔女狩り」が始まりそうだ。長期金利急騰に対する「火消し」としてはFRBのツイストオペ(短期債購入減、長期債購入増)が取り沙汰される。ブレイナードFRB理事は長期金利急騰懸念を示唆しており、注目される存在だ。もうひとつの案であった民間銀行の国債保有に関する規制緩和は延長されず、19日のNY市場では国債が売られ株価・金価格下落要因となる一幕もあった。

議会証言は通常数時間に亘り、入れ替わり議員が質問者となる。選挙区向けの演説調質問も多いが、経済通の議員は鋭くポイントを突いてくる。米経済テレビでも通常の番組を休み、通しで生中継する。市場は一言でも本音、失言は聞き漏らさず、更に発言の行間を読む。

なお、株式・外為市場も最近は米国債入札結果に敏感に反応するようになった。前回の7年債入札が不調だったので、ここは要注意である。
期末要因としては債券価格の減価(利回り急上昇)により、米国年金のリバランスの米国債購入が「安定要因」として期待されている。

更に、日本のGPIF、生保などの機関投資家も、新年度に入りNY市場でも、その債券購入動向が注目されている。
仮に更なる長期金利上昇により1.8%から2%が視野に入っても、そのプロセスは一直線ではなかろう。米国債市場が短期投機マネーの草刈り場と化した感があるからだ。空売りの際には米国債を借りてくる必要があるのだが、そこでレポ市場が使われている。短期金融市場で資金の貸し手になれば、担保として米国債を入手できるからだ。その結果レポ市場で貸し出し競争が激化してマイナス金利という異常現象まで起きている。長期金利の変動幅が大きい状態が続きそうだ。

2021年