豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 雇用統計後に金急騰
Page3376

雇用統計後に金急騰

2021年11月8日

3376.png

注目の10月雇用統計は事前予想45万人増のところ53万人増。更に8月、9月分が大幅上方修正。失業率4.6%まで改善。平均時給も前年同期比4.9%上昇。
非常に良い数字が並び米国株価は上昇。

しかし、米債券市場でドル10年金利が1.4%台まで急落したことでドル安に振れ、金市場には思わぬ追い風が吹いた。漁夫の利の如き金高だ。
これだけ良い雇用統計なら利上げ観測は益々強まり、ドル金利は上がるはずなのに下がったのは何故か。

パウエルFRB議長はテーパリングを開始する条件は整ったが、利上げは別物で、より厳しい条件を満たさねばならないと説いてきた。利上げのハードルは高いのだ。今回の雇用統計だけではまだまだ利上げを正当化できない。パウエル氏は利上げがまだまだ先の話とも語っている。それゆえドル金利が下落したのだ。
雇用統計発表で一区切りとなり、債券投機筋が膨らんだ米国債売りを巻き戻したこともドル金利安の一因と言える。
NY市場では「謎の金利安」とまで言われている現象ゆえ、それが追い風となり急騰した金は漁夫の利を得たわけだ。

筆者は中長期的なドル金利上昇は続くと見ている。今回の意外な金利安は一過性であろう。10年金利が1.4%台まで反落したところで、更に1.2%まで下がるのか、再び1.6%以上に続騰するのか。筆者は後者だと思う。

なお、絶好調とも言える10月雇用統計で心配な部分がひとつある。
労働参加率が61.6%と相変わらず上がらないことだ。コロナ前には63%台であった。怠け癖がついたのか、コロナが落ち着いてきても復職や求職をしない労働者が多いのだ。まだ感染を怖がって働かない人。学校再開も不透明なので子育てのため働けない女性。この際違う職種に転職するため自己啓発に勤しむ人。コロナ前には働いていた高齢労働者の中で、もうこの際引退や隠居を決め込んだ人。理由は様々だが労働市場の規模が縮小しているのかもしれない。ここはFRBも気になるところだろう。

金急騰も額面通りには受け取れない。

なお、今週米消費者物価指数発表がある。インフレ上昇が続けば金のレンジ上抜けも考えられる。
上値抵抗線は強いが。

2021年