豊島逸夫の手帖

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野村巨額損失、アウェイで苦戦する日系企業に逆風  

2021年428

さて、いよいよGW!と言っても全く盛り上がらず。金価格も今日(日本時間明朝)のFOMCを控え静かな展開。パラジウムだけ投機筋が小さな市場に集って暴れている。ビットコインと全く同じ現象でまともに構っていられない。好きにしてという感じ。

ニュースで笑えたのが「紀州のドンファン」。世事に疎いので全く知らなかったが、家族には「えーー知らないの?」と驚かれた。案の定というか、純金製の置物とか続々出ているのが職業上の興味を引いた。それにしてもNHKニュースまでワイドショー的な見出しで笑えた。

今日の写真は、毎年GWに咲く花が今年はGW前に終わりそうという身近な風景。気候変動だね。

3252c.jpgさて、以下は今日の本論。
27日の野村記者会見はウォール街でも注目された。決算発表の場でモルガン・スタンレー、クレディ・スイスと相次いでアルケゴス関連の説明があり、残る大手は野村という展開になっていたからだ。

まず損失額が想定を上回ったことは「想定内」の反応だ。
驚きはその理由について、北村CFOが「3月29日から31日にかけて(アルケゴスが投資していた銘柄の株価が)下落したため」と説明したことだ。

米系大手2社が大量売却を決行したのが26日のこと。アルケゴス関連主要銘柄のバイアコムCBS株の増資主幹事にもなっていたモルガン・スタンレーが増資募集締め切りを待って「出遅れた」が、それでも週末28日にブロックディール(大型相対取引)で売り逃げている。
対して野村の売却は31日まで続いていたことになる。期末ギリギリまで決断に時間を要した組織の内部事情が透ける。

更にアルケゴス関連の取引は4月23日時点で97%以上の処理が完了したとの説明に不安を抱く現地企業CEOたちもいる。アルケゴス発覚直後からたまたま株価が下落した企業には「アルケゴス関連銘柄か」との疑惑の目が向けられているからだ。それに対して当該CEOたちも自社の主要株主の名前が分からないケースがある。トータルリターンスワップが利用されていると買い本尊の名前が表に出ることはないからだ。残り3%とは言え個別企業にすればかなりの金額になる。

人事も話題になっている。米持ち株会社のCEOに米JPモルガンで経営幹部を務め、現地の金融事情に通じるクリストファー・ウィルコックス氏を起用。かねてCEOを務めてきた赤塚庸氏との共同代表とするとの発表である。
異例の国際畑出身の奥田現CEO体制で、更に国際化路線が強化されていたはずだが、それでも「現地の金融事情に通じる」助っ人人事かとの声が上がる。敢えて共同代表というツートップ体制に変えたことで日本人CEO更迭は回避されメンツは保たれた。しかしこれは筆者も体験してきたことだが、共同代表を据えると社内の組織図のレポーティングラインが実線・点線入り乱れ、あみだくじの如き様相になる。社内の決断も益々遅れがちになる。これでは現地雇用で優れた人材からは敬遠されがちになろう。

欧米の報道姿勢も気になる。かねて日本人は英語も不得手で国際ビジネスには苦戦との「風評」が流れていたので、「案の定」との報道が目立つ。確かに筆者がコロナ前に定期的にニューヨークに出張すると決まって招かれるのが日本料理店であった。そこは日本人駐在員、バンカー、商社マンたちが和やかに集い、現地の苦労話や情報交換の場である。「2~3年の辛抱」とひたすら耐える悲壮な決意も聞かれた。そもそも華僑、印僑は多いが和僑は少ない。

その中で最も善戦と見られてきた企業の巨額損失事件に対して現地の目は冷ややかである。

2021年