2021年1月25日
22日にバイデン大統領が「コロナ白書」を発表した。190ページもの労作でバイデン政権の対コロナ戦略が細部に亘って纏められた。キーワードは政治ではなく、科学に基づくコロナ対策。政治的目的を排し、ひたすら科学的な裏付けのある事を良くても悪くても伝え、透明性を高めるという方針だ。更なる説明のため白書発表後、初の新報道官(サキ氏)による定例記者会見が開催され、今や国民的英雄のファウチ氏が「大統領首席医療顧問」として登壇。前政権の定例コロナ関連記者会見でも頻繁に説明役に回ったこともあり、さっそく記者団から「新政権での感想」を問われ、「自由になった感じ。科学で語れる。」と述べた。前政権当時は壇上で傍らに立つトランプ氏が睨みを利かせていたシーンが想起される。
同氏は「英国型変異種より、南ア型変異種が若干心配」とも語った。「ワクチン効果が、分かりやすく説けば、100から80程度に下がる可能性はある。それでも効果としては有効だが。」と釘を刺さした。
さて、「コロナ白書」では今や戦争状態と想定して、戦時必要物資としてワクチン生産の優先化が明記された。最大のネックである連邦政府と州の連携体制を改善するため調整機関も創設する。ワクチン関連予算で全米に100のワクチンセンターも設立して、全土の薬局までの供給ルートを整備する。接種拒否者や感染確率が高いヒスパニック・黒人系住民に対する啓蒙活動も強化する。
包括的な内容だが市場の反応はクールだった。株も金も若干下げた。
最大の懸念は1.9兆ドル規模のコロナ対策予算成立の目途が未だに立たないことだ。同案には「就任100日以内に1億回接種」という目標達成に欠かせない、「コロナ接種促進のための200億ドル、コロナ検査支援500億ドル」が含まれる。更に州政府への予算支援も不可欠だがここは共和党の反対が強い。実質的に51対50という超僅差の上院を通すには、「財政調整法=リコンシリエーション」という切り札を使えば、民主党賛成だけの強行突破は可能だ。しかし「劇薬」だけに対象案件も回数も厳しく制限されている。この手段を特に好む民主党左派サンダース上院議員が「上院予算委員会」に名を連ねて睨みを利かせていることもバイデン氏は無視できない。更に弾劾審議に時間を要し、予算案からイエレン次期財務長官を始め、主要閣僚の議会承認が遅れている。
バイデン大統領は超党派による合意が最も望ましいと繰り返し語ってきた。
その後、長年の盟友マコーネル共和党上院院内総務から思わぬ助け舟が入った。「弾劾審議は後回しで2月に行う」との決断だ。これにより少なくとも予算審議も閣僚人事早期承認にもやっと道が開けた。とは言え議会での議論開始の目途が立っただけで、バイデン大統領は予算「減額」の妥協でマコーネル氏への「借りを返す」展開になるかもしれない。
市場では「就任後100日に向けカウントダウンが始まった」と語られる。その初日から「青い波」の実態は「青いさざ波」程度かとの厳しい現実を見せつけられた思いだ。
バイデン大統領はコロナ情勢に関して「最終的に良くなる前に、最も厳しい冬が来るは必至」と国民に覚悟を訴えた。米国のコロナ死者数が40万人を突破して第二次大戦時を超えた。マスクを着用せねば更に死者数は5万人増えると語る。その上で就任直後を「勝負の10日間」と呼び、大統領令を連発してバイデン政権の方向性を明示している。
マーケットは果たして「100日以内」との目標達成予定日まで待てるか。忍耐が試される展開である。
政治的に視界不良で金は頭が重い。
さて、NHKニュースでも大々的に報道された中国金鉱山事故。多くの労働者が地下に閉じ込められた。
実は私はその近くの金鉱山に潜ったことがあるので冷や汗(-_-
中国山東省は有数な金鉱山地帯。南アと異なり住宅街の近くで500メートルも掘ればザクザク金鉱石が出てくる。
私が行った地区はその名も「金都」。青島空港から車で2時間ほど。
金鉱山会社が市の中心部にデパート並みのビルの金宝飾店を営業している。所謂縦の統合(Vertical integration)。
ただ南アやオーストラリアに比し、金鉱山のインフラや設備はお粗末だった。純金抽出過程で化学物質を多用してブクブクしている上に板を載せて歩くといった感じ。金鉱山会社といっても党の要請でノルマの生産トン数を達成できればOKという社風。報償金として国から貰ったという金の延べ板数十本を社長はあっけらかんと得意げに見せてくれた。食事はフルコースでとても美味しかった。
あの国の金埋蔵量は計り知れぬものがある。