豊島逸夫の手帖

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パウエル議会証言原文公表、利上げ観測後退に一石

2021年1130

今日は難解な英文解釈の編。原文URLはこれ↓。勉強家の人はチャレンジしてみて。そうじゃない人はすっ飛ばして。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/powell20211130a.htm

日本時間30日早朝に、NY時間30日に予定されているパウエルFRB議長議会証言の原文が公表された。
注目点はオミクロン株出現の米国経済への影響に言及した部分だ。
まず「雇用と経済活動の下振れリスクとインフレに関する不確実性を高めている」と述べた上で、「ウイルスへの懸念が強まり、労働意欲が削がれ、労働市場の回復が遅れ、サプライチェーン混乱が増長される」とした。
原文の前半では「我々は物価安定目標にコミットしている。経済と強い雇用を支え、高インフレの常態化を防ぐため、(金融政策の)ツールを動員する」との決意も語られている。
基本的に雇用と物価のふたつの目標を両論併記しているが、オミクロン出現とサプライチェーン混乱、労働意欲後退を明確に関係付けた。

金融政策は供給制約を制御できないので、利上げか否か、危うい綱渡りを強いられるパウエル議長の悩みも滲む。本番では意地悪が少なくない議員たちから様々な質問が投げられるので、日本流に言えば「察してくれ」と言いたげである。
「FEDを含む予測者の多くはインフレが来年には鎮静化すると見ている」ものの、「今や(it appears now)」と文を改め、「供給制約の影響を予測することは難しい」と苦しい言い訳とも読める一節も入れている。
更に、コストプッシュ型インフレに関する前半の部分で、インフレ長期化に関して「来年のかなりの期間に亘る(well into next year)」と強く表現しており、オミクロン出現によるテーパリングのペースダウンと利上げ後退の民間観測先走りを牽制した感もある。

パウエル氏は「FEDを含む予測者の多くは」と一括りに扱っているが、実際には民間の見方とFOMC参加者の見方の間には認識ギャップがあるので、どちらに収斂してゆくのか。インフレ目標達成に比し、雇用面の労働参加率進捗が低位安定傾向なので、まずは今週発表の11月雇用統計が注目される。
競馬に例えれば、第4コーナーを曲がったところでタカ派とハト派のせめぎ合いがヒートアップしそうだ。当面のゴールは12月14~15日のFOMCだが、レースは延長・再試合もあり、2022年1月FOMC以降も続く。

週明けNY市場の金価格は、先週金曜日のオミクロンショックに対する市場の激しい反応に対して反省気分となり、一息いれたところで金曜日に安全資産として買われた米国債・円・金が売り巻き戻される展開で1780ドル半ば。

さて、今日の写真は私の昨晩の気ままな夕食。
カニとパンケーキのミスマッチ感(笑)。
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そして北海道の友人が送ってくれた魚一式と猪苗代町の知人が送ってくれた会津名物、見知らず柿。
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昔、将軍に献上したところ「未だかかる美味な柿を見知らず」と絶賛したとか。現在でも皇室御用達。この柿は渋柿種なので、アルコール(焼酎)や炭酸ガスでじっくりゆっくり渋抜きしてから食する。これが柿かと思えるほどのムースみたいなまろやかな食感。

[追記:アップデート]
日本時間14時頃にモデルナCEOがFTインタビューで「既存ワクチンはオミクロン株に対して、効果はかなり落ちる。私が話した科学者たちは皆『これはまずい』と言っている。新たなワクチン大量製造には何か月もかかる。他の変異種への対応も必要なので、全てをオミクロン株対応へ切り換えはリスクがありできない。来年夏までにはなんとか。」との内容。

午後2時過ぎに日経平均がいきなりこの報道で急落。462円安。ダウ時間外で400安。円相場は113円の大台割れ視野の円高。

そして国際金価格は9ドルほど上昇中。米国債10年の利回りは1.46%まで急落。安全資産の米国債・円・金に再びマネー流入中。日本時間夕方時点。

2021年