豊島逸夫の手帖

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FOMC、FRB内部対立が鮮明、ECB、日銀へ配慮も滲む

2021年729

注目されたFOMC後の記者会見はいきなり核心を突く質問から始まった。
「『雇用とインフレ率に相当な進展が見られれば』金融政策の変更も厭わずとのことだが、それは具体的にどのような経済状況を意味するのか。例えばインフレ目標2%のような具体的な数値を完全雇用についても示せるのか。」
しかし、パウエル議長は具体的数値目標には言及せず明言を避けた。
そこにはFOMC内部のタカ派への配慮が滲む。

6月FOMC後に発表されたドットチャート(参加者の金利予測)では7名が2022年利上げを予測した。最近の発言から市場ではボスティック・アトランタ連銀総裁、ブラード・セントルイス連銀総裁、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、ジョージ・カンザスシティー連銀総裁、ローゼングレン・ボストン連銀総裁、カプラン・ダラス連銀総裁の6名をタカ派と特定している。特にカプラン、ブラード、ボスティックの3氏は自らがその7つのドットのひとつであることを認めている。「ハト派」への反旗とも見られる異例の「告白」だ。その中でパウエル議長は「中道派」と位置付けられる。

タカ派の懸念は現在のインフレ傾向を一過性と「甘く見ると」、後々急激な引き締めに追い込まれ、市場が混乱するリスクだ。
更に7月の議会公聴会では議員たちから選挙区での不動産バブルのリスクが指摘された。対してパウエル議長は今回のFOMC記者会見で、MBS(住宅担保証券)購入が住宅ローン金利を押し下げ、住宅価格高騰の要因になる可能性を否定した。

デルタ型変異株への対応についても意見が割れる。
パウエル氏は実体経済への影響が逓減傾向にあると語ったが、直近の米国保健当局CDCが発した警鐘との温度差は否めない。

また、パウエル議長はECB(欧州中央銀行)や日銀への影響も配慮せねばなるまい。8月には世界の中央銀行家たちが集う恒例のジャクソンホール中央銀行フォーラムが控えるからだ。
既にECBラガルド総裁は先手を打ち、実質的にインフレ目標を2%以上に引き上げるフォワードガイダンス(金融政策の方向性を明示)を発表した。その結果外為市場ではユーロ売り・ドル買いトレードに火が付いた。米国の国益を考えればドル高は米国債の信認を高めるが、米国製品の国際競争力を弱めるので自国通貨高も一線を超えればパウエル氏も「不快」に感じるのではないか。「不快」とは議会公聴会で想定を超える物価上昇率高騰について同氏が使った表現である。

総じて、主要中銀「緩和継続の我慢比べ」の展開になる可能性を秘めるが、その中でFRBが緩和縮小を躊躇えばドル安・円高リスクも浮上する。IMFに先進国中で唯一経済成長予測を下方修正された状況でこれは日銀も看過できまい。

かくして市場は8月相場波乱を覚悟しつつある。まずはFOMCタカ派からの発言など「異音」が顕在化しそうだ。
グローバルな視点でFRBは「世界の中央銀行」との認識も依然根強い。黒田日銀総裁が発言すれば欧米市場で注目されよう。
このような国際経済環境で緩和的姿勢に転じた中国人民銀行の「我が道を行く」政策スタンスも人民元相場を通じて波乱要因となり得る。

リモート勤務が一般化したウォール街でもリゾート地からいつでも市場に参加できる臨戦態勢が目立つ。

FOMC後の市場はテーパリング急がずとの観測からドル長期金利下落、ドル安で金が1815ドル程度まで買われた。引き続きレンジ内の取引である。

さて、東京五輪は桃田選手予選落ちなど、前評判の高かった選手たちが落ちて、若手の新人の金メダル奪取が目覚ましいね。世代交代の時期なのだろう。これは良い傾向だと思う。個人的にはメジャーリーグ大谷選手のホームラン攻勢復活にワクワクしているよ。大きい一発打った直後、バットを軽く置いての確信歩きがかっこいいね~~(笑)。

2021年