豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 米消費者物価指数、39年ぶり高水準、市場の反応は
Page3400

米消費者物価指数、39年ぶり高水準、市場の反応は

2021年1213

市場は刻々動き、筆者は御用繁多。ブログの更新も遅れがちだ。
10日金曜日に11月米消費者物価指数が年率6.8%と発表された。その後の市場の反応を注意深く見てきたが、基本的に想定範囲内で大きな動きは見られない。インフレヘッジとされる金の国際価格は依然1800ドルに届かない。
既に12月FOMC(14~15日開催)を控え、ブラックアウト期間に入っているので、FOMC参加者の地区連銀総裁などからの公的発言もない。
パウエルFRB議長はテーパリング早期終了を明言して利上げの検討に入る姿勢を明らかにしたが、依然市場は2022年に3回程度の利上げを見込んでいる。最速来年3月にはテーパリングを終了して、5月には1回目の利上げ、更に年後半に2回の利上げを見込む。
金利を生まない金にとって年3回の利上げはきつい。
インフレヘッジとしては専ら米物価連動国債が買われている。
但し、市場ではビットコインが暴落後もジリジリ値を下げており、これまでビットコインを薦めていた市場参加者が金を見直す動きも目立つ。
今慌ててビットコインを見切り売りしているのは、最近一儲けを目論み購入した人たちで、彼らの平均購入コストは5万4千ドル程度とされる。実勢相場が4万ドル台になり、たまらず見切り売りに走っている。「インフレヘッジとしての仮想通貨」のキャンペーンも下火になった。

さて、インフレについての筆者の見解だが、来年前半にかけて高水準が続くと見る。しかし供給網の混乱も消費者のリベンジ買いも1年は続くまい。例えば既にロサンゼルス港のコンテナ船渋滞はピークを過ぎた感がある。
問題は金融政策だ。パウエルFRBが利上げを躊躇う間にもインフレが独り歩きして鎮静化せず、慌てて複数回の利上げに追い込まれるシナリオが最も懸念される。しかし過熱のピークを過ぎた景気に急ブレーキをかければ経済・市場は混乱する。マーケットにはリスク回避傾向が強まり金は買われよう。これは来年の話だ。

なお、オミクロンのような変異種が再発すれば供給網混乱に拍車をかけインフレ加速のリスクがある。
これらを考慮すればするほどパウエルFRBは海図なき航海という非常に厳しい対応を強いられる、恐らく誰がFRB議長でも上手く乗り切ることは至難の技であろう。
金の出番はこれからである。

2021年