豊島逸夫の手帖

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日本株主導要因、政変から感染減へ、流れ繋ぐ

2021年9月14日

今日の一般メディアはNHKがトップニュースでバブル後株価最高値超え。相変わらずこの話題だ。

相場には理屈を超えた「流れ」というものがある。買いの流れも一服すると溜まっていた売りが一斉に噴出する。
今回の日本株ラリーも日経平均3万円までの第一波は、突然の菅首相退陣による政変が生んだ漠たる「期待」が主導した。しかし、さすがにいきなり3万円前後まで突っ走ると政治期待先行だけでは持続力に欠ける。首相候補者に十分な準備期間なく、アベノミクス並みのインパクトのある政策提言を求める方が無理筋というものだ。3万円ラインに接近した辺りから、経済メディアでも「過熱の兆し」、「売りサイン点灯」などの見出しが目立ち始めていた。事実、菅首相退陣表明直後に買った外国人短期投機マネーの中では利益確定を急ぐ傾向も見られた。
そのようなタイミングで一日の感染者数減少が日々顕著になった。ワクチン接種も一定の拡大を見せた。市場には俄かに経済再開期待感が強まり、第二波の日本株上昇が昨日、今日と3万円台で続いた。
結果的に日本株上昇主導要因の絶妙なバトンタッチが買いの流れを支えたことになる。
感染者の急減傾向顕在化が1週間遅れていたら、日経平均3万円台維持は難しかったのではないか。
今後については、良質の外国人長期投資マネーをどこまで呼び込めるかに尽きる。これまで参入している「外国人投資家」マネーの殆どが、これまでも経常的に日本株市場に関与してきた短期性資金だ。最長数か月でポジションをひっくり返す「招かざる客」ばかりである。

そもそも今回の日本株ラリーは、例えばウォール街では昨日までほぼスルーされている。殆ど話題にさえなっていない。騒いでいるのは日本株デスクだけだ。
経済メディアも殆ど報じていない。米国CNBCを夜通し見た日もあったが、遂に日本株への言及はゼロであった。週明けの昨日、ウォールストリートジャーナルやフィナンシャルタイムズのグローバル市況を読んでも日本株への言及が欠落、或いは僅か一行だ。本日の欧米経済メディアの論調には注目している。
筆者が参加するNY市場関係者の定例Zoom会議でも2週連続で話題にさえ上がっていない。
要は読者が興味を示さないので記事にもならず、日本株見直し機運は生まれない。
次期首相が年内を目途にアベノミクスのような大きな変化を期待させるスマートなキーワードを打ち出せるか。
日本という国には「物価が上がらない国」と「少子高齢化の国」という有り難くないレッテルが貼られて久しい。このマイナス感を払拭できるインパクトを生むには1か月程度の準備期間では不十分であろう。

今後コロナ禍改善傾向がより顕在化して上手く買いの流れが断ち切られない展開になるか。
個人投資家も見極めが必要だろう。

2021年