2021年4月16日
15日に発表された米3月小売売上高は前年比9.8%増。過去2番目の増加幅となった。更に4月4~10日の週の米失業保険新規申請数は57万6000件で、前週から19万3000件も減少した。約1年1か月ぶりの低水準だ。こうなるとドル長期金利が1.7%を超えても不思議はないところだが、実際には下落して1.6%台を割り込んだ。
これはNY市場でもサプライズと受け止められた。
理由としては様々な見解が流れる。
ドル金利先安を見込んだ投機筋売りの買い戻し説。
ペントアップ需要噴出によるインフレが生じても一時的と断じるFRBの一貫した姿勢。
更に新年度入りの日本セイホによる米国債買いを指摘する見解も少なくない。
かねて米国債券市場では日本勢の動きが注目されていた。
カリスマ投資家のデビッド・テッパー氏は、3月8日の時点で「日本の機関投資家の買いが米国債市場の安定要因になろう。為替ヘッジコストを勘案しても米国債へのマネーシフトが予想される。ドル長期金利も安定化の方向に向かい、株価にも好材料になる。株に弱気にはなれない。」と述べた。
同氏は発言がしばしば米株価に影響を与えるほどのカリスマ的存在だ。
更に米国債の日本時間(時間外取引)での動きを丁寧に分析して、「日本勢の米国債買いがニューヨーク市場参加者の投資家心理や市場予測に少なからず影響を与えている」と結論づけたレポートも大手投資銀行から流れていた。
日本の財務省が15日に発表した対外及び対内証券売買契約などの状況でも、日本の投資家による海外中長期債への投資は4週間連続の買い越しであった。
今や日本は米国債保有が1.2兆ドルに達し世界最大の保有国だ。同2位は中国の1兆ドル超だがドル離れの中で徐々に保有高は減少の傾向にある。頼みのFRB米国債購入もテーパリングが視野に入り、2020年の2兆ドルから減少は必至と市場内では見られている。その結果米国財政における日本の存在感が顕在化しているのだ。深読みすればバイデン政権日本厚遇の姿勢も経済的視点では米国債購入の最優良顧客へのバイデン流おもてなしとも映る。
15日のニューヨーク市場では、ドル金利下落により米国株価指数は史上最高値を更新。外為市場ではドル安が進行。ドルインデックスも一時は93を超えていたが、今や91台まで下落した。円高も108円台で進行している。
結果的にはデビッド・テッパー氏の予言は当たっているようで、今後も日本勢の米国債買い或いは売りがニューヨーク市場では注目されよう。
このドル金利下落を受け、金国際価格もKITCOグラフ緑線のように1770ドル近傍まで急反発。金利にサプライズ性があったので、金の反応も鋭かった。