豊島逸夫の手帖

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相反する経済統計、金価格揺らす

2021年8月5日

4日のNY金市場では朝方にふたつの重要経済統計が発表され、金価格は1805ドルから1830ドルのレンジで乱高下を演じた。

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まず、米雇用サービス会社ADP発表の7月全米雇用レポート。
非農業部門雇用者数が33万人増。市場予測の65万人を大幅に下回った。前月改定値も68万人だった。5か月ぶりの低水準だ。この民間雇用統計は金曜日発表の本番雇用統計の前座のようなものだが市場の注目度は高い。これを受け米10年債利回りは1.13%にまで下落。金利下落は経済鈍化を映す現象とされる。外為市場ではドルインデックスが91.8まで急落。金は一時1835ドルに迫った。

ところがその後市場の景色は急転する。米サプライマネジメント協会(ISM)発表の7月非製造業(サービス業)景況感指数が64.1と、2008年統計公表開始以来過去最高の数字となったのだ。
市場予測は60であった。その結果米10年債利回りは1.21%にまで急騰。債券市場でこの上げ幅は大きい。外為市場ではドルインデックスが92.2まで急反騰。金価格は一気に1805ドルまで沈んだ。
この事例でも明らかなように金価格は米経済統計に一喜一憂する展開だ。結果的には膠着・安定状態が続く。

そして、今週金曜日はいよいよ本番の雇用統計。
これは重要だ。FRBも雇用統計を見て量的緩和縮小議論を進める姿勢だ。雇用が良ければテーパリング年内開始を早める。悪ければ延ばす。
引き続き筆者の注目点は、特に労働参加率の減少傾向だ。
そろそろ米国人被雇用者も働き始めるのか、まだ就業を躊躇うのか。市場も注視している。

なお、本日5日の日経新聞朝刊グローバル市場面に「米物価高、金現物買い誘う」の記事あり。筆者のコメントもあるが「中国、インドに続く現物市場第三極に」というくだりは違うと思う。米国人に金現物保有志向は低い。中国やインドのような文化的金現物選好度の高さは見られない。

さて、日本のコロナ対策迷走は出口が見えない極めて危険な状況だ。五輪の宴が終わった後、現実と直視する局面が懸念される。特に若者世代の動きがカギになりそうだ。

一方、オリンピックでは日本人若者世代のスケートボードなどでの活躍には勇気づけられる。立派なスタジアムなど要らない。路上で競えるスポーツ。選手たちもライバルというより仲間。良い演技には拍手。失敗には励ます。見ていて清々しい。

2021年