豊島逸夫の手帖

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金暴落、一時1700ドル割れ

2021年8月10日

3316①(チャート).jpg先週金曜日の雇用統計が事前予測を上回る結果になったので、FRBのテーパリング(量的緩和縮小)、更に利上げが前倒しに早まるのではないかとの観測が浮上。まず債券市場が反応。10年債利回りが1.2%から1.3%へ向けて上昇開始。依然低水準のドル金利だが、上がれば金利を生まない金には逆風。これを受けて外為市場ではドル高。これも金には下押し材料。一気に1760ドル台まで急落。
そして週末。中国でのデルタ株懸念が強まり、コロナ規制再強化の動き。更に中国経済指標の輸出入統計が悪化。デルタ株→中国経済不安で原油需要減が囃され原油価格が急落。それに連れて商品市場の金も売られた。
そしてビットコイン相場。4万ドルの大台を回復して短期マネーが金から仮想通貨へシフト。

以上のような背景で、金は今週月曜日午前中に1670ドル台まで急落後、1730ドル台まで急騰という投機的フラッシュクラッシュが生じた。(KITCOグラフ赤線参照)。ただでさえ取引の薄いアジア時間帯を狙った米超投機筋の仕掛け。これはいかにも下げ過ぎ。
筆者は本欄で短期的弱気、中長期的強気と言及してきたが、短期的にはまだ脆弱だが弱気感は薄れつつある。
今週は米消費者物価、生産者物価発表などの重要指標が目白押し。FRB幹部発言も予想され荒れ模様だ。いよいよジャクソンホール中央銀行フォーラムも近い。ここではFRB議長は金融政策「所信表明」するので要注意だ。
なお、1650ドル以下では空売り買い戻しも活発化して、現物買いと共振しつつ、下支えされると見る。
現物要因としては、新興国中央銀行の公的金購入が今後も続く可能性に注目。財政の崖問題も不安視され、米国株バブル警戒感も強く、公的金購入が正当化される市場環境。

さて、五輪も終わり、いよいよ感染爆発を直視する時。多分2週間後くらいに東京の感染者数は一日1万人を超えたところでピークアウトして、逆V字型に急減するのでは。インド、英国でのデルタ株感染事例からの推測ではあるが。いずれにせよ自粛ではもはや制御不能。

2021年