豊島逸夫の手帖

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FOMC後、貴金属全滅

2021年6月18日

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金が1760ドル台。1900ドルからの急激な下げは「暴落」と言えるでしょう。2021年はテーパリングが金のリスクと、年初の日経インタビューでも指摘しましたが、私の想定より早く、しかも激しく市場を襲っています。意表を突かれた感があります。プラチナ、銀、そして銅、原油、穀物に至るまでコモディティー全面安です。コロナ後の経済回復、需要急増を見込み買われてきましたが、予定より早いペースでテーパリングが進行しているので売られています。量的緩和縮小、更には利上げという金融引き締めへの転換が視野に入ったからです。株の世界でも景気敏感株が売られています。

外為市場でドル高が顕著なこともコモディティーには売り要因。
ひとつ不気味なことはドル金利が上がらず、若干ながら下がっていること。これは世界経済成長がコロナ後でも、もたつくことを予測して、債券が売られているということでしょう。金利は経済の体温計とも言われますから。低インフレ・低金利という現代の経済体質は変わらないようです。

更に、コモディティーを投機的に買い上げてきた人たちが、一斉に見切り売りに走っていることも要因のひとつです。

金に関しては、金利を生まない資産ということで利上げが視野に入ると売られやすいですね。インフレも今年に限ってはFRBが強調するように「一時的」になりそうです。コロナ後のペントアップ需要が噴出した後はインフレも沈静化するでしょう。但し長期的にはとてつもない財政赤字を日米とも抱えていますから、インフレ必至。そして専門的にはインフレ指標であるブレークイーブンインフレ率(BEI 5年、10年)が下落して、実質金利が上がっていることも金への逆風として重要です。
一方、インド、中国、中東などの現物市場では実需が活性化されるでしょう。日本も然り。この現物要因が下支えになります。

総じて要経過観察ですが、私の2021年後半の金価格予測も下方修正を考えています。もう少し様子を見てから決めます。
なお、ドル高で円安気味ですから円建て金価格は相対的に下がりにくい環境でもあります。私は本欄で何回も繰り返してきましたが、筋金入りの円安論者ですから全く違和感はありません。

2021年