2021年11月9日
最近NY金市場でも真の金専門家が「絶滅危惧種」になりつつある。金の部門の顔ぶれを見ても株式・債券・外為部門から人事異動で配属された人たちが目立つ。
筆者は日本でも金専門家育成の必要性を感じ、有望な若手を指導してきた。ところが多くの場合、日本流の人事異動で2年後には他部門に回されるなど、なかなか金の専門職が育たない。
多くの分野を浅く広く体験させるジェネラリスト育成志向が優先する。本人も人事では金のスペシャリストよりジェネラリストの方が主流と感じる場合が多い。
金市場の規模も限定的だ。
しかし「金は世界経済を映す鏡」と自著に書いたように株式・債券・外為など、様々な市場の動きが金価格に影響する。金価格をフォローするということは世界経済をフォローすることに等しい。
そもそもそれゆえ筆者は独立後、株にも債券にも外為にも精通しているマクロ系専門家として活動できているわけだ。
金需給などミクロの視点とマクロの視点のバランスが肝要である。
とは言え「育成」のプロセスも難しい。
やはりNY・ロンドン市場で直接金のディーリング業務を体験しないと分からないことも多いからだ。だからと言って金専門家育成のために社員をNY・ロンドンに転勤させることは現実的に困難であろう。中国・インド・ドバイの金現物市場も現地で体験しないと分かりにくいことだらけだ。
たまたま筆者はその全てを体験できたのだが、これは例外的事例だ。それゆえ何とか言葉で伝えてゆこうと試みているのだが、もどかしく感じている。構築した世界的な人的ネットワークも何とか次世代に繋げてゆきたいと常に意識している。
このブログなど色々な場面で少しずつでも金市場の現場の雰囲気を伝えてゆきたいと思っている。