豊島逸夫の手帖

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日銀動向、米長期金利続騰を誘発

2021年3月19日

18日のNY債券市場では、取引開始直後からいきなり10年債利回りが1.75%まで急騰した。そこで指摘された要因のひとつが日銀、長期金利操作の変動幅をプラスマイナス0.25%に拡大との日経電子版報道であった。長期金利上昇のドミノ現象が起こりつつあるとの認識が広がった。

今回の米長期金利急騰の過程では、日銀の存在が異例の注目の対象となっている。
3月8日には黒田日銀総裁の「長期金利変動幅を大きく拡大することが必要とも思っていない。」との衆院財務金融委員会での発言がNY市場では材料視された。

著名投資家デビッド・テッパー氏が「黒田発言により日本の生保など機関投資家は今後米国債購入に動かざるを得ない。日本人機関投資家の米国債買いは10年債利回りの安定要因になる。」と発言。日本市場の視点では、この議論に賛否はあるものの、同氏の発言は過去にも米株価を動かす事例が少なくない。当日もダウ工業株30種平均も306ドル高で引けた。

この経緯があるゆえに日銀が一転、長期金利変動幅拡大に動くとの情報によりサプライズ感が生じたのだ。今回の日銀政策決定会合にも異例の注目を浴びている。「NY時間深夜だが、何かあったら知らせてくれ。」と、NY市場の知己たちの依頼からは切迫感が伝わってくる。

更に、FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長が長期金利急騰について明確なコメントを避けたことも要因のひとつとされる。
パウエル氏の真意はどうなのか。これまで「金利上昇は健全な経済回復を映す現象」と語ってきたパウエル氏は金利急騰を放置するのか。
真意を測りかね、疑心暗鬼の市場がパウエル氏を試しにかかっているとも解釈される。長期金利抑制に有効な手段を持たぬFRBの弱点を突く投機筋の仕掛けとも読める。これまで市場では「FRBには逆らうな」と言われてきたが、今や「FRBを疑え」に変わりつつある。

一方、米長期金利上昇の質的変化も指摘され始めた。
筆者は1.5%を「臨界点」として、それを超えると良い金利高から悪い金利高に変質する可能性を論じてきた。
その1.5%が本格突破された今、NY市場では米国債超増発、財政赤字膨張問題が改めてクローズアップされ始めている。イエレン財務長官とパウエルFRB議長コンビによる財政ファイナンスというような表現が会話の中で出てくるようになった。主要経済紙でも米国債保有者としてFRB、日本、中国の動向が論じられている。
米長期金利急騰も新たな段階に入ってきた。

金価格も単に名目金利上昇に反応して下がる段階から、財政不安の悪い金利に反応して上がる局面が徐々に始まりそうだ。
KITCO金価格24時間グラフの緑線が昨日の乱高下。急落後、反騰している。売りと買いが交錯の状態だ。

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2021年