豊島逸夫の手帖

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習近平政権の通貨戦略における「金」

2021年7月13日

中国人民銀行の外貨準備としての公的金購入が止まっています。
しかし、長期的に見れば外貨準備の中で米ドルを売却して無国籍通貨としての金の割合を増やす戦略は変わらないでしょう。現在は「一服状態」と言えます。
現時点で習近平政権の最大の課題は人民元を国際決済通貨として世界的に拡大してゆくこと。そして、デジタル人民元です。
まず、人民元の国際化に関してはロシアと共同戦線を張っています。ロシア中央銀行が人民元の保有を増やし、中国と共同歩調を取る姿勢を明確にしているのです。両国とも米ドルが国際基軸通貨として世界の通貨覇権を把握している状況が気に入らないわけです。中国は一帯一路経由でも人民元決済を増やしてきました。
次に、デジタル人民元ですが既に実験的使用を一部地域で開始。世界主要国に先駆け、自国通貨のデジタル化を推進する戦略です。
このような流れの中で、人民元には中国人民銀行による市場介入が、人民元レートを一定方向に誘導する操作だとの批判が常につきまといます。通貨当局として「お行儀良い」姿勢とは映りません。
そこで人民元価値の裏付けとして一定の金を公的に保有することは、人民元の国際的認知を高める意味があると言えましょう。
なお、中国人民銀行による金購入は不定期なので、統計的にはばらつきが生じる結果になります。

筆者は5年後には中国の公的金保有量が5000トンを超すと見ています。世界で断トツの外貨準備規模を持つゆえ、決して荒唐無稽な数字ではありません。5000トンでも外貨準備の中での比率は10%程度でしょう。欧米主要国の60~80%より遥かに低い数字なのです。
なお、日本は米国政府に遠慮して公的金購入は控えるでしょうね。金を買うという行為は米ドルへの不信任票とも言えるからです。

2021年