豊島逸夫の手帖

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バイデン高圧財政、財源は日本勢米国債購入に期待も

2021年4月1日

日本時間今朝6時前から始まったバイデン大統領の2兆ドル規模経済成長策発表。既にコロナ対策で1.9兆ドル。更に経済成長策には第2弾も控える。市場が気になるのは財源だ。ホワイトハウス発表の資料をもとに法人増税6950億ドル、海外収益への課税4950億ドル、優遇税制撤廃などで2710億ドルの歳入を見込むとの試算もある。しかし増税だけで不十分なことは明らかだ。

バイデン政権としては今後10年というタイムスパンで見れば、集中インフラ投資により米国経済の生産性を上げることで回収できるとの考えだが市場は待てない。当面国債依存度が高まることは間違いなかろう。

そこで期待されているのが米国債保有額1.2兆ドルと世界一位の日本だ。第二位の中国が1兆ドル超だが近年ドル離れ傾向が強まる中で減少傾向にある。更に頼みのFRBもこれまで2兆ドル規模を保有してきたが、今後はテーパリング(量的緩和縮小)も視野に入る。その結果相対的に日本が有力な買い手として浮上してきたのだ。
特にGPIFとセイホの名前が有力な米国債購入保有者として挙がる。

本欄でも今回の米10年債利回り急騰過程でジャパンマネーの動向が、これまでになくウォール街で注目されていることに言及してきた。
例えばモルガン・スタンレーの債券アナリストは実に丁寧に米10年債利回りの日本時間(時間外取引)での動きを分析している。
今年2月に同レート上昇が加速した時は、その殆どの事例で日本時間日中に上がった(日本勢が売った)という。3月に入るとFOMC前までは、米国債売りが日本市場とロンドン市場の取引時間中に半々で起こった。そして直近ではアジア時間帯での米国債買いが抑制要因となり利回り上昇頭打ちになったと記している。この日本勢の動きは主として期末決算要因による現象だが、NY市場参加者の投資家心理や市場予測に少なからず影響を与えたとの分析だ。
今朝発表の最新統計でも日本の投資家の外国債券買いが2007億ドルと2週連続で増加している。

今後の動向については、日本が新会計年度入りすれば機関投資家の米国債購入が再開すると期待されている。為替のヘッジコストを入れても十分に魅力的な利回りがあると見込んでいるのだ。

かくしてジャパンマネーはバイデン政権の「財源」として重要な存在として浮上しつつある。
深読みすれば菅首相をバイデン大統領が初の外国人賓客として招待するなど日本厚遇が目立つ。バイデン流の米国債購入最優良顧客に対する「おもてなし」なのかもしれない。

これからバイデン大統領は、特に増税に関して米議会共和党の強い反対と対峙せねばならない。民主党内急進左派からは、これでは不十分との声も上がる。国内では四面楚歌の如き状況に置かれ、財政的には日本の存在感が強まりそうだ。ゴルフ友達の日米前首脳時代より強い切迫感が漂う。

さて、金国際価格は急反発。(KITCO金価格24時間チャート緑線参照)。再び1700ドル台回復。これは期末、空売り投機筋の買い戻しである。所謂ポジション調整。

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なお、今朝の日経新聞マーケット面記事で「金、3週ぶり1700ドル割れ NY先物 米金利高で資金流出」との見出し。金利高とドル高でNY金が下がったとの内容。マーケットアナリストの豊島逸夫氏は「米長期金利の上昇は新型コロナウイルスワクチンの接種拡大などによる経済回復への期待感が理由で、2%の大台を超える可能性もある。金には下げ圧力が強い」と話す。

例によって日刊の新聞取材ゆえ短期的見通しである。中期的底値圏に変わりなし。この取材がもし年末にかけてどうなるという問いであったら、全く違った強気トーンになっていた。

なお円安進行で一時は111円接近局面もあった。但しここでも期末要因で溜まっているドル買い円売り投機ポジションの巻き戻しが起きている。円相場が100円か110円かでは円建て金価格も相当違ってくる。筆者はご存じ、筋金入り円安派で自らの資産運用の半分はドル建て資産(含むゴールド)なので、為替市場もやっとまともになったかという感じ(笑)。とは言えいずれ円高局面もあろう。一直線で円安継続など単純な話ではない。

2021年