豊島逸夫の手帖

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WHO非常事態宣言後、株価反発・金反落の理由

2020年1月31日


狐につままれた如き感がある。

30日のNY株式市場では「米国で初のヒトからヒトへ感染事例」が発表された直後はダウ平均が200ドル超急落した。ところがWHO非常事態宣言後はダウが反騰に転じ、結局124ドル高で引けたのだ。その理由は「WHOが中国の対応を評価。中国への旅行制限を勧告しなかった」からとされる。航空会社株は3%前後反騰。カジノ株も2%程度反発した。


安全資産とされる金は売られ、1585ドルから1575ドルへ急落した。それでも依然高値圏を維持しているが。


総じてNY株式市場では、いずれ終息するとの楽観論が支配して、押し目を拾う動きが目立つ。短期売買のヘッジファンドでは、WHO非常事態宣言の「噂で売り、ニュースで買い戻す」という常套手段も見られる。

ちなみに引け後発表されたアマゾンの好決算で同株価は時間外で10%程度急騰を演じた。市場の注目点が徐々に決算にシフトしているとも言えよう。


とは言え、債券市場では米10年債の利回りが依然1.6%の大台を割り込む1.59%水準で推移している。3か月もの財務省証券のイールドが1.56%なので長短金利差縮小傾向は変わらない。

WHO非常事態宣言後、米国債はやや売られたものの、依然債券市場では警戒感が支配的だ。

株式市場は楽観論で育ち、債券市場は悲観論で育つもの。

市場間の温度差が鮮明である。


金市場も悲観論で育つのだが、噂で買ってニュースで売る短期売買が足元の市場を支配している。


なお、NY市場では、総じて中国発新型肺炎を「対岸の火事」と受け止め、切迫感・危機感が日本に比し相対的に薄い傾向が見られる。広い領土の中で、シカゴで初のヒトからヒトへの感染事例が報じられ、さすがにショックを受けても、全土を揺らすマグニチュードには達していない。シカゴでイベント自粛などの動きも未だ顕在化していない。マスク使用も特に勧められていないのは、風邪予防のマスク着用が異常な光景と映る風土の違いによる。まずは手洗いを徹底との認識だ。

今後、米国人感染者が増えるような事態になれば、市場の反応も変化しよう。


なお、明日土曜日朝9時からの日経プラス10サタデー(BSテレ東)に生出演し、新型肺炎の経済的影響を語る予定。


連日の市場大荒れで、依然ガッツリ肉食モードから抜けきらず(笑) 。


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2020年