豊島逸夫の手帖

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ワクチン開発とロックダウン懸念の狭間で揺れる市場

2020年11月16日

ファイザー社ワクチン90%効果で急騰した株価だが、その後コロナ感染拡大懸念が広がり、トランプ法廷闘争の不透明感も無視できず反落した。しかしここにきて再び強勢に転じている。金も1850ドルまで急落後、1890ドル台まで反騰した。

大統領選で政治空白期があっても一時的な事態と割り切り、中期的にはワクチン開発が進むと読み、株は買われている。

一方、今冬のコロナ情勢は深刻だ。部分的ロックダウンも不可避である。今年前半のような全面的都市封鎖ではなく、地域的ロックダウンとなりそうだ。今はトンネルの先に光が見えた段階だが本欄でも詳述してきたようにワクチン開発の道筋は険しい。この不安感がリスク回避の金買い要因となっている。

なお、今週はモデルナ社がファイザー社に近い水準のワクチン開発進展を何時発表しても不思議ではないとファウチ氏も語っている。更にファイザー社のワクチン安全性に関する2か月のモニタリング調査の結果も今週発表の予定だ。市場の反応が注目される。

一方、トランプ氏は依然徹底抗戦の構えで熱狂的な支持者の「教祖」的存在になっている。トランプ氏は大統領選結果について「時間が経てば分かる」と語ったが、市場はこの混乱も「時間が解決する」と見ている。懸案のコロナ対策追加予算も2兆ドル規模の包括的パッケージは難しそうだが、5千億ドル規模程度で最低限失業保険追加給付と中小企業救済程度を盛り込んだ案なら可能性ありと読んでいる。満額回答ではないがこの程度でもワクチン接種前の今冬は何とか凌げよう。この材料は金にも株にも上昇要因だ。

なお、ワクチン接種が波乱含みだ。トランプ氏はかなり急いて承認を「私の政権で」決定すると14日の記者会見でも繰り返し語った。そこに政治的意図を感じた国民が安全性の懸念から接種を尻込みして様子を見る可能性もあるのだ。

かくして短期投機筋は足元のロックダウン懸念に揺れる市場のボラティリティー(価格変動性)に乗り一儲けを目論む。対して長期投資家はポストコロナを視野に着々と株式のセクターローテーションを時間をかけ進めてゆく姿勢だ。金市場では長期的に世界はコロナと共存せねばならないことの不透明感がヘッジの買いを誘発している。

なお、コロナ深刻化で景気後退リスクが高まれば、FRBが量的緩和拡充に動いてくれるとの期待も根強い。12月FOMC後の記者会見でパウエル議長がその件につき議論されたことを明かした。更にサンフランシスコ連銀のデイリー総裁もパウエル発言を追認している。この点は12月FOMC議事録が注目されるところだ。具体的には当面は資産購入の内訳で長期国債の割合を増やす案が有力である。政治空白で財政政策がもたつくと市場では「FRB頼み」となり、この過剰流動性要因は金にも株にも買い要因となる。

さて、日本でも感染が日々深刻化。スキー好きの筆者にとってショックだったのはガーラ湯沢スキー場に近い南魚沼市の警察署でクラスターが発生して全員が自宅待機になったこと。思い起こせば昨シーズンの2月までは土曜日ともなれば上越新幹線は学生でラッシュ並みの混み方だった。更に外国人観光客の雪見ツアーも多かった。それが3月に入るやパッタリ。今年も空いているのだろうな。ゴンドラが密閉空間だけど窓を全開にする。皆スキーウエアだからね。定員8名のところ一台一組のペース。あとは雪上で、ここでのコロナリスクは薄い。今年はリフト券もICカードを着用していれば機械が読み取る方式になった。シーズンロッカーを借りているのだけどゴルフ場も含めてロッカーは一応注意だね。ロッカールームで感染事例はある。ということでマスターズは松山選手、残念な結果だったが土日の深夜はゴルフ中継を観ながらストレッチ運動をしてたよ~~。

2020年