豊島逸夫の手帖

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米国、中国の「為替操作国」認定解除

2020年1月14日

半年に一度発表される米国為替報告書だが今年は最新版の発表が遅れていた。外為市場も訝っていた。

そのような状況で、米中貿易協議「第一段階」合意署名(今週15日、今週の最大イベント)のため中国副首相が米国に到着したタイミングを狙ったかのように同報告書が発表された。合意署名式2日前である。

そして今回は中国の「為替操作国」認定を解除して見せた。

「為替操作国」認定の有無で実質的に大きな変化は生じない。専ら米国側が交渉圧力・対中非難の材料として使ってきただけだ。

米国側に認定解除で失うものは少ない。

今回は米中合意ムード演出のために使われた感がある。

とは言え、米国側も「人民元に関する更なる情報開示が必要」とクギを刺し牽制は怠らない。

対して中国側は人民元の国際化が重要な戦略だ。既に合成通貨SDRの構成通貨として、ドル・ユーロ・ポンド・円に次ぐ第五の通貨とIMFにより認定されている。デジタル人民元構想の前提条件として国際通貨人民元への一定の信認は必須条件だ。膨張する国内債務を債券化して外国人投資家に購入させるためにも人民元の国際化は欠かせない。それゆえ「為替操作国」のレッテルは邪魔であった。

そもそも人民元安は中国からのマネー流出、ドル建て債務の債務不履行リスク、外為準備減少を招く。

このような状況での米中貿易協議「第一段階」だが、薄氷の合意と言えよう。トランプ氏の娘婿クシュナー顧問が背後で調整役として動いたようだ。習近平氏最初の訪米の際にも「接待役」となった経緯がある。同氏はサウジアラビアのムハンマド皇太子ともSNSでチャットする仲とされ、中東問題でも影の繋ぎ役となっている。

問題は合意内容だが、最終翻訳突合せの段階で最後のドンデン返しのリスクは未だ残っている。しかも台湾・香港で米中が強硬応酬をした直後のことゆえ、もとより習近平氏とトランプ氏がにこやかに報道写真に並ぶはずもない。閣僚級の署名となる。格落ちの感は否めない。

マーケット関係者でもこれをまともに「本格合意」と受けとめる人はいまい。それでもこれは売り材料ではないということで株は「米中接近」を好感して買われている。特段買い材料がなくても、売り材料も特になければ買われるのが今の市場の実態だ。

最近NY市場で最も頻繁に聞かれる単語が「モメンタム=勢い」。

過去最高値更新の勢いに乗って行けるところまで行こう。不可避の調整局面が覚悟の上。売りに晒されても少なくとも高値圏維持は期待できるとの読みだ。

一過性の地政学的リスクより、最後は緩和姿勢を継続するパウエル氏頼みの地合いは変わらない。

このようなマクロ環境の変化ゆえ、金はジリジリ下げて1540ドル台。ドル高も効いている。と言っても依然高値圏。未だに買い気は強い。

さて、連休は大阪で1000人セミナーがあり、京都で十日戎に寄ってきた。東京では酉の市だけどね。関西は笹に飾りで商売繁盛の縁起物。とにかく先週は超多忙で睡眠不足だったので、後はひたすら爆睡して今週に備えた。講演も喋り続きだったので、途中から声が枯れてきて参ったよ。選挙運動後の政治家状態(笑)(笑)。

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2020年