豊島逸夫の手帖

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悲惨なコロナ医療現場、今こそ、ESG投資の出番

2020年3月31日

今日は株の話。
日米株価が反騰中だ。
しかし上昇相場特有の高揚感は感じられない。


NYの医療現場は悲惨だ。隣室の父の最期を家族が見とれない。医療用マスクから防護服に至るまで極端な不足状態なので、医者の立場では入室しようとする家族を制止せざるを得ない。人間として「苦渋」を超えた決断と語っていた。


クオモNY知事は今や全米最大ホットスポットのNY州に連邦政府が送る人口呼吸器の数が絶対的に少ないと憤る。緊急医療室で誰が先に死ぬのか決めるのは連邦政府のあなた方だとまで記者会見で語った。
同じNY市内でもコロナ対策2兆ドル予算を囃す株式市場と、惨状とも言えるコロナウイルス禍現場の温度差が鮮明だ。


「自宅待機で時間を持て余し投資を始めた。しかしこういう状況で株で儲かっても素直には喜べない。」と本音を打ち明ける個人投資家もいる。
これは日本にとって今や他人事ではない。
コロナ感染拡大カーブを見れば米国の方が日本の先を行く可能性が出てきた。
それでも日本株は申し訳なさそうに上がっていると見えるのは筆者の主観ゆえか。


こういう時こそ株を買うならESG投資を実践すべきであろう。
(E=環境、S=社会的責任、G=企業統治、を観点に経営されている企業に投資するという考え方)
人命(ライフ)を守ることに資するという意味で「ESGプラスL」も加えてみたらどうか。
ただひたすら「上がりそうなお宝株を物色」では、一般人から見ても「やっぱり株はカジノ」で終わってしまう。


なお米国では今回のコロナ対策予算の中の企業支援について、救済ないし緊急融資を受ける企業には自社株買いと配当を禁じ、従業員解雇を規制し、更に実業家のトランプ大統領を意識して特定の利害関係を廃することを明記している。
予算の位置付けも今回はあくまで「緊急支援予算」であり、通常の「景気刺激予算」とは一線を画する。


それでもトランプ大統領への風当たりは激しい。
州を高リスク、中リスク、低リスクと分け、封鎖などの規制を緩和して経済復興にも配慮する案を提示している。
「交通事故撲滅のため道路を封鎖するか」と語り、大統領選挙視野に経済へ軸足を移したく焦る気持ちが抑えられないようだ。
一般的には「恐慌か、人の命か」究極の選択と議論されるがそのようなことはお構いなしに、マーケットの現場ではアルゴリズム取引が機械的に売買注文を発動してゆく。
人間は今こそ社会的に責任ある投資姿勢を強く前面に打ち出す時であろう。

2020年