豊島逸夫の手帖

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金、吹き値売り

2020年8月25日

昨日の欧米金価格は瞬間的に1960ドル台まで急騰する局面がありましたが、すかさず1923ドルまで売られ、1930ドル前後で推移の展開でした。
利益確定売りのタイミングを模索しているヘッジファンドが虎視眈眈と狙っている感じです。

市場の材料はコロナ治療薬開発。FDA(米国食品医薬品局)がコロナから回復した人の血漿を投与する治療法を特別に認可しました。更に同局はアストロゼネカが開発中のワクチンも緊急使用許可を検討中です。この報道で米国SP500株価指数は節目の3400大台を突破。再び過去最高値を更新しています。株高→金安の展開になってきました。今年としては珍しいセオリー通りの動きです。

なお、今週の最大注目イベントはジャクソンホールでの中央銀行フォーラム。例年ワイオミングのリゾートに世界の中央銀行関係者が集い、主としてアカデミックな観点から金融政策を論じます。今年はバーチャルフォーラム形式。

珍しく日銀の経験談が注目されています。イールドカーブコントロール、オーバーシュートコミットメント、そしてマイナス金利。日銀が繰り出してきた新型金融政策を世界の中央銀行が注目しているのです。とは言え日銀のケースでは結果はイマイチ。かえって有力な金融政策手段が尽きている印象を与える可能性があります。市場の追加緩和への期待が強い分、失望感を生むかもしれません。これは金にとっても良い話ではありません。

基本的に日本は日銀がいくら量的質的緩和政策を進めても、デフレマインドから脱却できない国というレッテルを貼られています。ジャパニフィケーションと呼ばれ、ああはなりたくないみたいなトーンで語られ筆者もうんざり気味です。それゆえ日本では「インフレ」と言っても殆どピンときません。インフレの備えとして金が買われていると言っても、それは欧米の話で日本はデフレだよとの論調が依然根強いです。しかしコロナという未曽有の状況に陥り、未曽有の金融緩和を強いられている現在、過去の経験則は当てはまらないと思います。市中に「大放流」されているマネーの量たるや過去に例をみない規模ですから。中長期的には金の下値を支える要因は変わらないでしょう。

ここにきて俄か金論者が肯定論、否定論両方で噴出していますね。基本的に金についての知見がない著名アナリストが頭の中でひねりにひねって、金市場の視点では訳の分からない文章を書いている事例に接することが多くなりました。特に外為関連はドル円が膠着して干上がっているので、何か金に事寄せて書くという傾向が見られます。株式市場でも金建てにすると米国株価は上がっていないとか、金を物差しに使う事例が多く見られます。少々食傷気味ですよ(笑)。

2020年