豊島逸夫の手帖

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コロナ危機、米国銀行は耐えられるか

2020年626

昨日NY市場のテーマは銀行の健全性ということでした。
まず、突発的に銀行への規制緩和が報道されました。ボルカールールと呼ばれていますが、リーマンショックの教訓で民間銀行へ国の介入を強める政策です。トランプ大統領の基本方針「規制緩和」に沿った流れと見えますが、突然の発表で株式市場は歓迎しました。

そして引け後。これは予定通りですが銀行に対するストレステストの結果が公表されました。結論から言うと当然のことながらコロナショックの影響は厳しい。事態が流動的なので「再提出」という異例の持越しとなりました。最悪のシナリオだと対象となる33行の融資関連損失が70兆円相当を上回ることになります。それゆえ銀行の配当や自社株買いが規制されることになりました。但し個別銀行の査定は「再審査」ということです。市場も未だ消化しかねているところです。

米銀行の「金」売買もボルカールールの影響で銀行の姿勢は慎重にならざるを得ませんでした。トレーディングルーム縮小、閉鎖の事例もありました。それが「規制緩和」となれば再開となるかもしれません。ただ専門職のトレーダーたちが解雇され散り散りになっているので、トレーディングチーム再編成も容易ではないでしょう。なお金より原油売買の方に規制は強くかかっています。原油価格は家計を直撃するからです。金価格は良くも悪くも庶民生活への直接的影響は薄いということですね。

なお、昨日はIMFの警告も市場の話題になりました。経済成長率を厳しく下方修正したのですが、同時に日米株価も1から100の数値化で100に近い「大幅割高」と断じたのです。「実体経済と株価の遊離」も指摘されました。株式投資家と家計の感覚には相当の遊離がありますね。折から兜町では日経平均2万円で売る権利(プットオプション)の取引が急増中です。株式投資家がヘッジをかけているのですね。2万円以下への暴落に備え、2万円で売れる権利を今のうちに買っておくという「備え」の防衛行動です。

この株価下落へのヘッジとしては、金買いも当然選択肢に入ってきます。
その金価格は1800ドルに接近したところで、一斉に利益確定売りが出て下落しました。国際スポット金価格が1760ドル台で推移しています。この3日ほどでスポットベースでは1740ドル台から1770ドル台のレンジで動いています。NY先物8月ものベースでは1796ドルまでつけていました。通常はスポット価格が指標になりますが、日経はNY先物を指標にしています。今朝の日経朝刊では志田編集委員が「金上昇 初の2000ドルにらむ」との原稿を商品面に載せています。ゴールドマンサックスが最近のレポートで今年の金価格上値を2000ドルに引き上げたことに触発された記事です。この2000ドル議論はギリシャ危機の時も盛んに語られました。結局1900ドル前半で留まりましたが、さて今回は。短期投機マネー主導で動いているので博打みたいなもので当たるも八卦当たらぬも八卦。重要なことは投機買いによる瞬間タッチではなく、維持可能な価格水準がどの程度かということでしょう。私流の言い方では根雪とドカ雪新雪の違い。実需の裏付けのある価格水準が根雪。無い水準は新雪ドカ雪で表層雪崩のリスクあり。今は投機買いによるドカ雪がたっぷり積もったところ。まだ積もりそう。表層雪崩も起こるとすれば年末から来年にかけてというところでしょうか。コロナワクチン開発次第ですね。

2020年