豊島逸夫の手帖

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2000ドル接近、金価格、大波乱の一日

2020年729

昨日の国際金スポット価格はレンジが安値1907ドル、高値1962ドルと大荒れの展開になりました。時系列でみるとアジア時間帯で急騰後ストンと急落。NY時間帯で持ち直し、結局1950ドル台で推移しています。勿論史上最高値更新。投資家の買い意欲を示す日別統計であるSPDR金ETF残高も28日に9トン急増しています。値下がりしたところはすかさず買われていることが検証できます。但し現高値水準では実需は殆どゼロ。有価証券化されたペーパーゴールドが売買されているのが実態です。ここが金高騰の「死角」と言えるでしょう。短期的にはモメンタム(勢い)で投機的に買われているということです。投機筋は強気。何せ買っては売り、更に買っては売りを繰り返し、ほぼ全勝してきていますから、この高値圏で買って仮に梯子を外されても、痛くも痒くもないという心理でしょう。「勝てば官軍」ですね~。但し一般個人投資家は一回相場を外すと沈みっぱなしで浮き上がれないという事例が多いですから、プロの真似をするのは極めて危険です。プロは経験上「損切り」、つまり予想に反して下がってしまって損をするという状況に陥っても冷静に「見切る」ことが出来ます。筆者もスイス銀行のゴールドトレーディング部門に配属され、兄貴分の先輩スイス人ディーラーから最初に言い渡されたことは「損切り3年!」でした。よく鰻かば焼き職人さんが見習い弟子時代に「串打ち3年」とか言われていますが、それと同じような感覚ですよ。言葉では表現できない、そしてマニュアルでも教えられない心理的自制「セルフコントロール」を自然に体得してきたのがプロということです。

本音ではプロだって嫌ですよ、損切りで売り手仕舞うなんて。やりたくないです。でも割り切ってできる。明日は明日の風が吹くと翌日には心機一転、相場に立ち向かえるのです。個人投資家の中にもたまにいますけどね。所謂「ツワモノ=強者」が。でも日本人は特にリスク耐性が弱い。これは民族のDNAだと思います。

説教が長くなりましたが(笑)、アジア時間帯の金価格波乱には最近売り出し中の中国系ヘッジファンドが関与していると思われます。

なお、マクロで市場を展望すると注目が株価よりドル安の外為市場に集まっています。今回のドル安は米国の突出した感染者数が嫌気され、米ドルの売り要因の一つとなっていることが特徴。マイアミ・マーリンズという大リーグ球団で選手の集団感染が起きて公式試合を当面見合わせるという展開になり、これがプロバスケットボールなどスポーツ全般に自粛ムードとなり拡散中です。こういうエピソードが外為市場で米ドル売り材料として語られることは極めて珍しい。その結果104円台まで円が買われているわけです。但し「円は低リスク通貨として買われる」という感覚は薄れつつあります。日本でも感染者が急増中なので「低リスク」とは言い難いわけです。そこで無国籍通貨=金が買われています。とは言えその金もやや過熱気味で価格の振れが大きくなってきました。金市場にとって現価格水準は未知の海域で海図なき航海を強いられているのが実態。今後も日中の乱高下は繰り返されると覚悟する必要はあるでしょう。こういう時にやはり地味ですが「積み立てる」感覚が大事だと思います。

日経の知り合いの女性記者が以下の記事で実体験として披露していますよ。題して「高値更新の金、25年投資で学んだ続けるヒント」。

コンプライアンスで記者の株売買は禁じられていますが、金は買えることが許されているという事情もあります。筆者の「助言」も引用されています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61942200X20C20A7I00000/

さてさて今日もアジア時間帯で中国人のヘッジファンドが荒しまくるのか注目です。良くも悪くも中国人は民族的にリスク許容度が高いですね。

なお、以下は産経新聞の金関連記事です。よく纏まっていると思います。

見出し:「金」最高値更新中・・・コロナ、金融緩和、米中対立の3要因で騰勢

https://www.sankei.com/economy/news/200728/ecn2007280025-n1.html



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