豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. ワクチン開発進む、市場の反応に変化
Page3066

ワクチン開発進む、市場の反応に変化

2020年7月21日

まず、明日22日水曜日朝7時台のBSテレ東「日経モーニングプラスFT」に生出演して金と日本株について語ります。1時間番組の中で12分程度。
それから、本日発売の日経マネー最新号、筆者コラム「豊島逸夫の世界経済の深層真理」では「今、金市場に何が起こっているのか」について書きました。

さて、昨晩NY市場の話題は英国製薬大手アストラゼネカ社とオックスフォード大学の共同開発によるコロナワクチンの初期臨床試験で、強い免疫反応が確証されたとの発表。全年齢層にわたる1077人に投与したところ、ほぼ全員の体内で抗体が生成されたとのこと。日本への同ワクチン供給も「1億回を念頭に日本政府と協議」とされます。

極めて良好な途中経過ゆえ、これまでの事例ではNYダウが500ドル程度急騰しても不思議はないところですが、昨晩は僅か8ドルの上昇に留まりました。

ワクチン開発に関しては色々な治験結果が発表されており、材料として陳腐化した感が否めません。このアストラゼネカ社のワクチンも最速6か月で実用化を目指すというのですが、その6か月を果たしてコロナ禍中の企業が凌いで生き残れるかとの疑念も出始めています。昨晩もワクチン開発により経済の再開見通しが立てば持ち直すはずの航空会社やクルーズ船、リゾート系企業などの株が売られてしまいました。

対照的にアマゾンの株価は一日で8%高、テスラも9%高と勝ち組の銘柄はバブルの如く買われています。ハイテク中心のナスダックは連日過去最高値を更新するほど。コロナバブルの様相です。

そして、金価格はワクチン開発で売られるはずが買われて、一時は1820ドル突破の場面もありました。もはや1800ドル台の値動きとなっています。今後は米中関係激化、米大統領選挙などが金価格を動かす材料となりそうです。ポイントは残高が年間金生産量(3400トンほど)に匹敵するまで積みあがった金ETFが、いつ売られるかというところでしょう。残高の半分近くはヘッジファンドなど売買差益狙いの市場参加者により買われていますから。但し売る人あれば買う人もあり、新規参入の市場参加者も増加傾向にあります。その人たちは売られて価格が下がったところを狙って買いを入れると思われます。

さて、メディアからの取材が連日続いていますが、彼らの間でも感染者が出始めて殆どが電話・リモート取材となっています。今やどこにいるかは問題ではありません。いるところのネット環境が最重要になってきました。大手町・丸の内でも古いビルの奥まった会議室などでネット送受信が途切れる場合もありますし、裏磐梯高原の山中でも「圏内」であれば普通に仕事が出来ます。とは言えリモートで語ると8割は伝わるのですが、2割ほど伝えきれない部分もあり隔靴掻痒の感も拭えません。対面で話す時の目線、ジェスチャー、雰囲気、臨場感などは言葉で表せませんからね。改めて「コミュニケーション」の難しさを痛感することも少なくありません。

2020年