豊島逸夫の手帖

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金が下がってもワクチン開発成功を願う

2020年5月19日

金国際スポット価格が1760ドルを突破して、昨晩のNY市場で維持できるか注目された。
結果はあっけなかった。
NY市場オープン直前に米モデルナ社がワクチン開発、第一段階成功の報が飛び込み、株は急騰、金は直ちに1730ドル台まで急落した。

今の相場は株でもドルでも金でも、つまるところ「ワクチン次第」だ。ワクチンがあれば経済再開も軌道に乗り、良い連鎖を生む。
その核心に触れる事例で、しかも市場が全く想定していないタイミングだったので反応も大きかった。

冷静に見れば、米バイオ医薬ベンチャー企業が、まだ第一段階の臨床試験で実数8人について抗体獲得などで成功事例を得たという段階だ。今後、数千人規模での治験に移行して効果を確認する。副作用の有無も重要だ。市場が前のめりではないかとの冷めた見方も少なくない。個人的には金が下がってもワクチン開発が成功して普段の生活に戻りたいという気持ちの方が強いけどね。

その金価格だが下がっても1730ドル台と間違いなく価格水準は切り上がってきている。1750ドルで上値抵抗線が形成されそうだが、今後はその上値試しの局面となりそうだ。実際NY市場では依然強気ムードが支配している。

昨日の1760ドル超えは、超短期のヘッジファンドCTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー)の仕掛けによるプロの空中戦であった。
今後は一般投資家も参加するかたちで、新たな価格レンジが形成されよう。

モデルナ社のワクチンへの期待が高くなった分、今後不成功となると逆に失望感による揺り戻しも激しくなろう。
治験薬のレムデシビルも評価が分かれ、市場乱高下の要因となる局面があった。
ワクチン次第と言ってしまえば身もふたもないのだが、実際ワクチン次第である。

なお、昨日も米中摩擦エスカレートが懸念された。
舞台はWHO。中国寄りとされるWHOに対してトランプ大統領がどのような態度を見せるか注目される。

更に本日はパウエルFRB議長とムニューチン財務長官の議会証言も予定されている。中央銀行と財務省が仲良くコラボで動けば、財務省がいくらでも国債を増発して中央銀行が引き受けることで、マネー供給を増やすことが出来る。その意味で注目される二人が何を語るか。市場は発言の「行間を読む」構えだ。

さて、東京は何やら梅雨の走りのような天気。
この自粛生活が梅雨に入るとジメジメ、ムシムシの気候となりイヤだね。
年内はもう海外出張も無いと判断して、自分なりの新たな生活様式を考えているところ。虎屋の季節の和菓子や千疋屋のパフェ、そしてマガーリのイタリアン、京都らく山の京料理。全てお預け状態でストレスが溜まっている(笑)。

朝の散歩が日課となり実に健康的生活だが、アドレナリンがいまいち湧いてこないね。人生振り返ると、こんなにおとなしい日々を送るのは初めて。我が家の猫だけは飼い主在宅が多いので遊び相手がいて大喜び風だ。

2020年