豊島逸夫の手帖

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米国市場を揺らせた二人の「時の人」

2020年5月13日

日本時間13日午前0時頃から始まった上院でのファウチ国立アレルギー感染症研究センター長らの議会証言は、リモート形式で開催された。ファウチ氏自身もホワイトハウス職員の感染により、自主隔離中である。

トランプ大統領におもねることなく本音を医学的に論じるので、コロナ関連では最も影響力の強いとされる人物が、何を語るか世界の市場関係者がテレビ中継を見守った。

入れ替わり立ち替わり質問者となる共和党、民主党議員たちも、自らの陣営に有利な発言を引き出そうと誘導的な尋問を繰り返す。

ファウチ氏も自説に適合する部分は明確に肯定するが、異なる部分は軽く受け流す。

そのやり取りの中で、市場に影響を与えそうな発言が切り抜かれ、見出しとして流れ、結果的には株安を誘発した。

「学校の再開は遠い橋の如く先の話」、「拙速な経済再開は台無しとなる可能性」、「第二波は不可避」、「米国死者数は公表される数字より多い可能性」など、刺激的なコメントが続き、経済再開楽観論が急速に萎えたのだ。

更に、この注目議会証言終了を待って、いつもより遅い時間帯から始まったクオモNY州知事定例記者会見でも、不安な発言が飛び出した。

100人の子供にコロナ由来と見られる謎の川崎病(Kawasaki Disease)に似た症状の事例が発生して3名が死亡。現在調査中。年齢別内訳は、1~4歳児が18%、5~9歳児が29%、10~14歳が28%、15~19歳が16%とされる。「非常に心配な新たな問題で現在調査中」と語った。

NY州での出来事ゆえ、NY市場では不安視される結果となっている。

NY株式市場の反応も引け前30分になって急速に売りが拡大。終わってみればダウ457ドル安。これまでの株反騰をけん引してきたナスダックも大幅に下げた。

これまで経済統計悪化にも関わらず超大型財政金融政策期待で買われてきたが、経済政策でコロナは死なないことを思い知らされた感がある。

ホワイトハウス内でのコロナ感染事例が増えた結果、トランプ大統領とペンス副大統領も直接顔合わせる状況を避けているとの情報をCNNが伝えている。それでも両者ともマスク着用を拒んでいるという。

このような状況で国際スポット金価格は引き続き1700ドル挟み膠着気味だ。

2020年