2020年6月1日
ミネソタ州ミネアポリスで起きた白人警官による黒人拘束死事件が、今や瞬間的にはコロナを上回る関心を米国内で集めている。
スーパーチューズデーで予想を覆しバイデン民主党候補がミネソタ州を制し、その後の流れを大きく変えたことが鮮明に記憶に残る。
2016年の大統領選挙ではヒラリー・クリントン候補が僅差でトランプ氏に勝利している。
そして今回の大統領選。コロナ対策に集中していた議論に突如人種問題が浮上した。
デモにはソーシャルディスタンスを無視してマスクも着用していない参加者が目立つ。世論の潮目の変化を象徴する光景だ。
更にこのデモ参加へ駆り立てた感情の「伝染経路」が不明である。濃厚接触者が特定できないので組織的デモとは見られていない。
強い黒人支持者を持つバイデン氏はここぞとばかりに黒人層の窮状を訴求する。対してトランプ氏は略奪行為、暴徒化に強硬な対応を激しい口調で語る。今週この問題に関し演説も示唆している。
マーケット目線では経済再開への期待感に水を差された感がある。
今後の大統領選挙への影響も注目される。
スーパーチューズデーの如くミネソタ州の選挙結果が流れを変える可能性を秘める。
もうひとつの材料である「中国叩き」については共和党、民主党ともに強硬姿勢だ。
29日のトランプ大統領の中国問題に関する演説では米中貿易第一段階合意の見直しや制裁関税などの強硬措置が回避され、株式市場は安堵、金は若干反落したものの1730ドル台まで価格水準を切り上げている。
米国内向け中国非難合戦ではバイデン氏の方が強硬との見方も浮上している。そもそも「中国叩き」は民主党のお家芸でもある。
ミネアポリスの人種問題に関しては、バイデン氏が黒人層を擁護しつつデモ激化を諫めるバランス感覚が問われよう。地下室からのリモート選挙戦ではバイデン氏の不慣れな言動が目立ち、黒人への差別的発言が問題視された経緯もある。キャスターからの質問に対して聞き取れず「もっと音量を上げてくれ。」と語ったことで、77歳の高齢が意識される場面もあった。
それでも支持率では総じてバイデン氏が極僅差ながら上回る。実質的にはデッドヒートと言えよう。
ミネアポリスの事件は想定外の出来事ゆえ、金市場も注視せざるを得ない状況だ。
なお、最近金高騰ゆえ、あちこちで金についてコメントしているのだが、読者からこんな質問があった。
昨日発売の日経ヴェリタスで「金投資、コロナ禍で増す輝き」と題する金特集が組まれ、そこで筆者が「金の組み入れ比率10%」とコメントしている。本欄読者には30%を薦めている。これには理由がある。ヴェリタスの方は金未体験の初心者向けという取材だった。さすがに初めての人にいきなり30%とは言わない。一方、本欄読者は既に金保有者が多いので30%まで買い増しを薦める。
また、その特集では筆者の年末までの見立ても語っている。来年の見立てはワクチン次第。