2020年9月4日
多くの市場参加者が株高と実体経済の乖離に警戒感を強める中でNY株が大幅に急落した。特に大きな売り材料が出たわけではない。ドカ雪の如く積もった新雪が表層雪崩を引き起こした感がある。ロビンフッターには初の本格売りの洗礼だ。一方、一般の米国人投資家の中には下がった場合の損失が限定できるコールオプションに切り換える人たちも目立つ。基本的には上げ基調継続と見るがリスクは軽減したいとの思いが透ける。
対して、機関投資家たちは既に多くが下げに備えプットオプション購入などヘッジ策を講じていた。下げも想定内である。
ヘッジファンドたちはボラティリティーの高さに「いざ、出番」と臨戦態勢だ。
恐怖指数と言われるVIXは一日で26%も急騰して33と危機ラインに達した。
本欄8月28日付け「VIX先物高が示す米金融政策リスク」では、VIX(スポット)が当時24のところ、10月ものが31、11月ものが30と先高になっており、米大統領選挙を控え市場は波乱を懸念しているとした。
それが既にスポットで33、10月、11月ものは35前後と更なる波乱を暗示している。
それでも今回は売らず、市場の更なる上昇に賭ける投資家が期待するのは、9月FOMCにおける追加緩和議論の可能性だ。具体的には量的緩和強化、社債購入枠拡大などが語られれば、かなりのインパクトが見込まれる。
とは言えFRB側には悩ましい状況だ。今回の有事対応金融政策の目玉と言える民間企業への融資が、特に手続きが煩雑で不人気だ。優良な企業にしてみれば社債を発行した方が容易に低金利で資金調達できる。
パウエル議長がジャクソンホールで発表した新金融政策が、NY株買い手の心の支えになっているが、株価が急落すると頼りのFRBにも疑念が生じる。平均インフレ率という概念も「平均」とは、かなり曖昧な表現だ。FRB側としては金融政策の自由度を維持したいのだろうがマーケットは透明性を求める。ジャクソンホールでの発表直後の高揚感も徐々に冷めて、市場の上昇モメンタムも萎えてきた。
金融政策の限界が露わになる中で財政政策が注目されているが、兆ドル単位の経済支援策については両党のにらみ合いが続いている。足元では週600ドルの追加失業給付も期限切れとなり、直接的に消費者信頼感が萎んできた。議会は夏休みに入り、マーケットは焦れる。
総じて、緩和マネーの多くはキャッシュで待機資金となっており、更なる上昇余地を残す。まずは一服。短期調整期間は止む無しという段階であろう。
そして金は1920~30ドル台で推移。反応薄。
金価格が一服状態になってから「金高騰」を聞きつけた一般メディアが取材攻勢。遅い!
専ら来年以降3000ドルの話をしている。