豊島逸夫の手帖

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日本株高、日銀買いが下支えの官製相場

2020年8月26日

今日は日本株の話です。

日経平均がコロナ前の水準を回復しました。と言ってもコロナ感染に怯え、とんでもない経済的ダメージを受けている多くの国民に現実感は薄いでしょう。経済の実体から乖離した株高です。それもこれも日銀のおかげ。まず量的緩和マネーが株式市場に流入していること。そして何と言っても株価が下がると、すかさず日銀が株ETF買いで歯止めをかけてきた事実が効いていますね。直接的に市場の売りを封じ込めてきました。官製相場とも言われます。上海株も「国家隊」と言われるのですが、「官民一体」で下げを食い止め、上げを演出しています。日本株も上海株も同じようなものですね。

日銀は今やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を抜き、日本最大の株主になるのは時間の問題という状況です。
銘柄別でも日銀は存在感を増しています。日銀が大株主である企業をランキングで見るとこうなります。

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今や日銀株ETF保有額は約37兆円。上場企業の56%にあたる2100社で実質的に上位10位以内の「大株主」になっています。筆頭株主になった企業も97社!
その間外国人株主は減少傾向なので外国人が売った分も日銀が吸収している構図になります。

さて、問題は日銀がこの巨大な保有株をどのように最終処理するのか。おそらく黒田総裁も明確な案は持っていないと思います。仮に日銀が少しでも売りに出せば日経平均は暴落しますからね。かと言って中央銀行たる日銀がいつまでも株投資みたいなことを続けるわけにもゆきません。次期日銀総裁は貧乏くじ引くことを覚悟の上の就任受諾になるでしょうね。

更に日銀は「モノ言わぬ株主」なので企業統治の見地からも問題が指摘されています。
外国人投資家の視点では中央銀行の株買いは「禁じ手」です。
日銀の買いにより日経平均は4000円程度かさ上げされているというのが欧米投資家の計算なのです。
安倍首相健康不安説が流れる中で次期政権が引き継ぐ潜在リスクでもあります。
筆者はご存じのように長期投資論者ですが、日本株については3~5年以上の長期保有は怖いと感じています。

2020年