2020年10月13日
今朝の日経朝刊商品面が伝えていますが、8月に世界の中央銀行は金買いより金売りの方が多い状況に転換しました。ネットで12.3トンの売却です。
近年は中央銀行が年間500トン以上を購入することが普通になっていましたから気になる統計です。
今回の売りはウズベキスタンの31.7トン売りに集中しています。但しこれが一過性か否か。新興国経済はコロナ禍の直撃を受け、経済は極めて厳しい状況にあります。そこで「虎の子」の公的保有金にも手を付け、売却して現金化せねばならない経済環境は続くでしょう。大事なことは決して金を見切って売るのではなく、やむを得ず金を売らざるを得ないということです。経済が立ち直れば再び金を買い戻すことも十分にあり得ると思います。当座を金で凌ぐ。これが有事の金の本筋。それを実行していると言えましょう。
中央銀行の金買いの背景には、国際基軸通貨米ドルへの信認の欠如が指摘されます。米ドルの通貨覇権に対する反発が金買いとも言えましょう。
今年の金需給統計では、中央銀行の金購入量は200~300トン前後に減りそうですが、これは一時的な現象。中長期的に公的セクターが金保有を増やす傾向は変わらないでしょう。
振り返れば1990年代には中央銀行セクターが年間500トン前後を毎年売却し、その結果金価格は250ドル!!にまで下落したのでした。そこで危機感を抱いた世界の中央銀行がワシントン協定を締結して、年間の中央銀行売却総量に500トンの上限を課したのでした。「中央銀行がどこまで金を売り続けるのか」疑心暗鬼に陥っていた市場は安堵して、相場は底値から反発に転じたのです。
そしてリーマンショックをキッカケに米ドル不信が強まり、更にトランプ大統領登場となり、外貨準備からドルを売り金を買う現象が加速してきたわけです。金を買うという行動は米ドルへの不信任票とも言えます。
日本は米国に配慮して、日銀が金を買うことは控えてきました。そのかわりに膨張した日本の外貨準備の多くは米国の借金証文である米国債で占められています。一方、金廃貨を声高に唱える米国の公的金保有量は8000トン以上と「ダントツ」です。核も金も、自ら保有するものは他国に持たせないのが米国ということでしょうか。
中銀と金の話題が出るたびに考えさせられる問題です。