豊島逸夫の手帖

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トランプ再選を望む市場、株価連日1000ドル幅大変動

2020年3月5日


民主党バイデン候補のサプライズ圧勝でスーパーチューズデーは幕引きとなった。

ウォール街で今年の米大統領選挙は「誰がマシか」との相対評価になっている。

まずはトランプ大統領再選でトランプ相場継続が、厄介な大統領だが最も「マシ」なシナリオだ。

次がバイデン民主党候補。中道で自由貿易派だ。法人税を21%から28%に増税も提示していることが気になるが、サンダース氏が唱える35%よりマシだ。

そして最悪と見なされてきたのがサンダース候補。急進左派で反ウォール街の旗手である。同候補が万一大統領になればNY株価は2割以上下がると言われてきた。

それゆえ「目の上のたんこぶ」が取れた如き安堵感が市場を支配している。


それにしてもダウ平均1275ドル高とは。

今週に入りこれで4回目の日中1000ドル超株価変動だ。

高速度取引を駆使して超短期売買を繰り返すCTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー)と言われるヘッジファンドが売買注文を相次ぎ繰り出している。一日の出来高も連日記録的だ。

この超乱高下の背景はもちろんコロナウイルスが醸成する不透明感だ。米国内の検査キット不足が解消され感染拡大の全貌が判明するまでは、この異常なボラティリティー(価格変動)は止まるまい。

VIX(恐怖指数)も瞬間的に49まで急騰した後急落しているが、強い警戒水域とされる30台は維持している。


この市場喧噪に埋もれてしまったが、不評のFRB0.5%緊急利下げ問題の議論も市場内では侃々諤々展開されている。

要はパウエル議長の言葉不足。まず必要とされるのはコロナ直撃の中小企業向け財政支援だ。金融政策の役割は市場センチメントを改善して金融市場の安定を計ること。

しかし債券市場が発する異音は止まらない。株価は歴史的乱高下を繰り返すが、米10年債利回りはほぼ一貫して下げ続け今や1%台攻防の段階にある。この異音が株価の変動幅を増幅させている。

今後だが1000ドル幅の乱高下が繰り返されても不思議はない。


仮に米国内で感染拡大が加速すれば中国が米国人を隔離する事態も視野に入る。自国内では感染ピークが過ぎたと主張する中国が、報復的に中国人の米国渡航制限を宣言するかもしれない。初動が遅れたとの国民からの批判をかわすため、米国での感染者数増加を国営通信社が「速報」で伝えることも考えられる。更に米中通商「第一段階」で合意した知的財産権保護、技術強制移転改善の実行に関して「フォースマジュール」(不可抗力事項)を宣言して棚上げする可能性もある。コロナウイルスという「天災」で多くの中国企業が企業構造改革にまで配慮できる状況ではないとの主張だ。既にサプライチェーン破断で米国への輸出が不可能になった中国製品について、中国はフォースマジュールの適用に動いている。

しかし大統領選真っただ中のトランプ大統領が素直に受け入れられる話ではない。

既に1月の「通商停戦合意」以降、2月の米国製造業指数が好転するかと思いきや逆に悪化する事例も目立つ。

かくして米中貿易戦争とコロナウイルスの影響が共振する事態はリスクシナリオとして認識すべきだろう。

1000ドル刻みの株価変動に対する市場の耐性も徐々に強まってゆきそうだ。


金は1630ドル台で推移。1600ドル割れまで益出し売りしてきた短期売買ヘッジファンドが買い直している。売買回転が速く廻っている。順回転の相場の腰は強い。


さて、私もステイ・ホーム気味で、3月3日には家庭内で自家製「ちらし寿司」。色合いが綺麗だね。これぞステイ・ホーム・エコノミーの実例か(笑)。


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2020年