豊島逸夫の手帖

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異常な選挙戦、トランプ氏、レームダック化も

2020年10月8日

大クラスター発生で実質的に空洞化してきたホワイトハウス内の一室から、大統領はツイートを連発して独自の選挙戦を展開している。

6日にはコロナ対策追加財政支援案の協議を選挙に「勝利する」まで突然延期した。ダウは一時600ドル幅で急落。そこでさすがに考え直し、数時間後には「個人給付金1200ドル、航空産業へ250億ドル支援、小企業支援1350億ドルを認める。」とツイート。日本時間昼の発表であったがNY市場で歓迎され、ダウは一転530ドル急反騰した。金も反騰したが1900の大台には戻らず。明日はどのようなツイートが市場を動かすのか。市場は翻弄されている。異常だ。このような市場環境での株式投資は「丁半博打」に近い。投資家も嫌気。トランプ氏が早晩「狼少年」扱いされても不思議ではない。

筆者は寧ろ7日に発表された前回FOMC議事要旨の方に注目した。実はFOMC内部ではかなり意見が割れていたことが明らかになっている。もし期待される財政支援策が不十分であれば、量的緩和の再点検・増額の可能性もあると読める。一方、少なくとも2023年まではゼロ金利維持の明示については慎重論もあった。金融政策弾力的運用の自由度を確保したい本音が透ける。市場は量的緩和強化を期待しているので、次回大統領選挙翌日開催のFOMCが注目される。

そして、本日日本時間午前10時から副大統領候補討論会があった。結論から言うと市場の反応は討論会中にダウ時間外で40ドルほど上昇した程度。大統領候補討論会のような「罵り合い」にはならず、一応まともな討論にはなった。しかし肝心の最も知りたい質問になると両者ともに回答回避を繰り返した。隔靴掻痒の感が残る。それでも「場外乱闘」にならなかったことで「安定化」を想起され、僅かながらダウが上昇したのか。米世論動向を様々なメディアで検証してみると、最大公約数的には経済面でトランプ氏有利、コロナ対策でバイデン氏有利との評価傾向が見られる。ペンス氏は即「バイデン増税」に切り込み、ハリス氏は「年収40万ドル以下に増税はない」と応じたが、やはり選挙に「増税」の言葉は重く響く。但し増税時期は遅らせる可能性がある。市場では増税はマイナス要因だが、民主党政権の巨額インフラ投資への期待度が相殺している。ブルーウェーブ(民主党勝利でねじれ議会も解消)シナリオが実現すれば、インフラ投資案も即決まると楽観的に見ている。

なお、トランプ大統領はやはり「コロナと戦い勝った男」のイメージをビデオメッセージで強くアピール。「私に投与されたリジェネロン抗体カクテルは即効いて元気を回復した。」と「自らの体験」でコロナを語る。とは言え高齢・肥満でコロナ感染の事実は重い。ツイート連発作戦に対するマーケットの反応も徐々に慣れて、徐々にトランプ氏がレームダック化してゆく展開が意識され始めた。

2020年