豊島逸夫の手帖

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ワクチン円高、売られるドルは愛されぬ通貨の王様

2020年12月18日

ドルインデックスが90の大台を割った。特にファイザー社の有効確率9割ワクチン開発報道が出た11月9日近辺からドルの下げが加速している。8月から10月にかけてはドルインデックスが92から94のレンジ相場となっていたが、その後ワクチン開発進展に呼応する如く92の下限を割り込み、遂に89台まで下落した。2018年4月以来のドル安水準だ。同月の月平均円相場水準は107円半ばであった。この間の円高はほぼNY主導で、まずドルが売られ、通貨ペアとして円が買われている。ワクチン開発を好感した米株高で投資家のリスク選好度が高まり、NY市場では低リスク通貨(あるいは安全通貨)とされる米ドルが売られたのだ。

なお、一般的に安全性を求めるマネーが米ドルに流入と言われるが、実態は「流動性への逃避」だ。米ドルなら巨大な市場の中で常に売り方と買い方が居るので、流動性が枯渇するリスクを懸念する必要はない。短期的な需給関係により足元を見られ、プレミアムやディスカウントを吹っ掛けられることはあるが。
未だに日本では「円」も「安全通貨」との認識が強い。しかしNY市場では「米ドルがキング=王様」だ。

俯瞰してマネーの流れを見ると、最近のNY市場で最も「混みあっている」トレードが米ハイテク株買い、ドル売り、そしてビットコイン買いとされる。

ここでビットコインが買われる背景にも「ドルへの信認低下」が無視できない。外為市場における「ドル安」とは異なり、「ドル不安」或いは「ドル不信」を映す現象と位置付けられる。

この「ドル不信感」は中国・ロシアで特に根強い。近年ロシア中央銀行は人民元の保有を増やし、通貨面で中国と強調して「ドル離れ」に動いている。

更に、イスラム圏では民間で未だに嫌米感情が根強く残り、イスラムファイナンスの世界では「嫌米債」と称して、米ドル決済システムから独立した金融商品なども検討されるほどだ。
ユーロもそもそもは米ドル覇権への対抗の発想から誕生した。

かくして俯瞰すれば、外為市場のドル安も世界的ドル離れのひとつの現象と言える。

バイデン政権になっても米国内の分断は変わらない。アメリカ「合衆国」の結束の空洞化が変わらなければ「ドル不信感」は残る。
実態は米ドル決済システムなしで世界経済は立ち行かない。米ドルに代わる基軸通貨も見当たらない。しかし米ドル覇権への反発が強いことも事実である。

金買いの根強い理由が、まさにここにある。最近はドル安でもドル高でも金が買われる局面が見られる。仮にドル高でもドル不信、ドル不安は根強いので、ドルの代替通貨として金が買われるのだ。

さて、今日の写真はゴルフボール。
この「豊島逸夫の手帖」ブログも3000回を超えたので、その記念にいただきました。GOLD 3000は、同時に金3000ドルという私の「長期」見通しとも一致します(笑)。

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2020年