豊島逸夫の手帖

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どうなるワクチン相場

2020年11月19日

18日にファイザー社から安全性に関する発表があった。
8000人の調査対象者の中で強い疲労感が3.8%、強い頭痛が2%。重篤な副作用は認められず。更にFDA承認には19000人を対象に2か月のモニタリングによる安全性確認が必要とされ、その結果は既に出ているが現在評価中としている。

一方、ファイザー社ワクチンの「有効性」について最終結果も発表された。調査対象44000人の成人ボランティアの中で170人がコロナの少なくともひとつの症状を発症。その中でファイザー社ワクチン接種者は8人。偽薬接種者は162人で有効確率95%とされた。皮肉なことだが米国内の感染者急増により統計的に有意な発症者数データが得られた感もある。

今後の米国でのワクチン開発スケジュールは、まず12月8~10日に第三者委員会で評価され緊急承認となる予定だ。年内2千万人分生産供給を見込む。対象は医療従事者と高齢者。21年に入り接種対象が一般国民に拡大する。但しヒスパニック層や黒人層へのワクチン接種は手間取る可能性がある。政治的に急いだ承認との印象も強く、当初接種拒否者も少なくなさそうだ。前例ない短期間で全土接種を目指すので、地方病院までの流通ロジスティックスにも難問が待ち受ける。市場の見方としては全土接種に至るのは早くて4~6月期、7~9月期にずれ込むことも視野に入る。

ここではマーケット環境が悩ましい。
まず政治空白の中で政権移行チームは当面動けない。トランプ大統領に引き継ぐ姿勢は見られない。その間コロナ情勢に好転は望み薄だ。

一方、コロナ危機下で米国個人保有の現金・貯金の類は1兆ドルを超すと推測されている。潤沢な待機資金を背景に号砲がかかればマネーが一斉に動くことになろう。或いは金、株、ドル、国債、原油などの間でセクターローテーションが緩やかなペースで数か月かけて進行するかもしれない。米国人気質として経済回復の道筋が明確になれば潜在需要が爆発的に噴出する可能性もある。

バイデン増税という抑制要因もあるが、新政権としていきなり消費回復の頭を叩くようなことは控えられよう。政策優先順位を下げて後回しにするシナリオが市場では意識されている。

金価格だがコロナプレミアムが300ドル程度上乗せされていると考えられる。コロナなかりせば、金価格は上がっても1600~1700程度であっただろう。

これが剥落したらどうなるか。
残るのはコロナ有事対応でばら撒かれた、かつてない規模のマネーの量だ。これがマグマの如く沈殿している。実体経済は長期で見れば構造的な低成長。マネーの量は超高成長。通貨価値の希薄化は必至だ。

「刷れるドル・円、刷れない金」の差が鮮明となろう。

2020年