豊島逸夫の手帖

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産経新聞寄稿文

2020年9月16日

以下は昨日掲載された寄稿の原文です。
金に興味など持ったことが無い読者を想定して書いていますので、量的緩和とかドル不信など経済的なことには触れていません。

2020年、コロナ禍のなか、資産運用の世界で大ヒット商品になっているのが「金」です。金の国際価格は史上最高値を更新しています。

その理由は、これまで当たり前のように「これを持っていれば損もせず安心」とされてきた預金と国債が、そうも言っていられなくなってきたからです。預金しても、ゼロ金利。場合によっては手数料まで取られる。国債に至っては、利息を貰えるどころか、場合によっては、買ったほうが利息を払わねばならないという、なんとも理不尽な「マイナス金利」現象が日本だけでなく世界的に生じているからです。

では、それでなぜ、「金」が浮上しているのでしょう。金も利息や配当金を生みません。しかし、金は数億年の時間をかけて地下に出来た希少資源で、それ自体、独自の価値を持つからです。有史以来採掘された金の総量は50メートル水泳プール4杯分にすぎません。株、国債と異なり、誰かが「発行」したものでもありません。それゆえ、コロナの影響で、発行した国や企業の信用が大きく揺らいでも、金は独自の価値を保つのです。紀元前から金貨が通貨として使われてきた3000年の歴史もあります。

とはいえ、金の価値は分かったけれど、「金」を買うといっても、「あれはお金持ちの話で、私とは世界が違う」と思う人も多いようです。
でも、金には、月々3000円程度の金額で毎月買って積み立ててゆくという商品があるのです。今は、株の世界でも「積み立て」が主流になっていますね。時代の流れだと思います。月々定額で買えば、金価格が高い月に買える金の量は少なく、安い月に買える金の量は多くなり、長期的には最も効率的な金の購入方法なのです。金価格は先物市場の影響で毎月のように上がったり下がったりしますから、個人が買う時期を決めるのは至難の業。実は、この私も、プロですが、金は定額積み立て一筋です。なお、前提として、金価格が長期的に上昇しなければ、積み立てても意味がありません。金の場合には、有限の希少資源で世界の金鉱山の生産量は今がピーク。これから徐々に減ってゆきます。残るは海底の金鉱脈。しかし、太平洋の底で金を採掘するなど、途方もなく採算のとれない話なのです。

最後に資産運用の観点で、金は脇役です。主役は配当金を生む株式。金の特徴は主役が不調のとき値を上げること。それゆえ、金保有は財産の10%程度におさえましょう。

2020年