豊島逸夫の手帖

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新型肺炎、中国経済を直撃

2020年1月24日

米中貿易協議「第一段階」合意後、暫時安堵感に浸っていた市場を新型肺炎が直撃した。WTOが緊急事態を発動せず、現段階ではサーズの方が悪性と多くの医療関係者も判定しておりNY株価も買い戻された。

しかしサーズと比較すれば、中国国内の高速鉄道や国内航空網は2003年当時とは比較にならないほど発達している。多くの武漢市民が既に実質春節入りで市外に拡散している状況も想定される。今後感染者が波状に拡大してゆくシナリオも現実味を帯びる。

中国経済について米中通商暫時休戦で年内は政策主導の景気持ち直しを見込む予測が増えていた矢先に想定外の事態が発生した。勘繰れば、中国側が察知して米中合意を急いだ可能性も否定は出来まい。武漢の新聞が本件を1月6~19日の間一面報道しなかったことで「独自報道を規制された」可能性も指摘されている。

武漢市では全国の地方政府幹部集会が1月7日~17日に開催され、当局が冷静を装い公表が遅れたとの見方もある。市内の病院には感染者ゼロのノルマが課され、未達だと病院事務長は解雇される危惧もあり看護師は感染者報告を遅らせていたようだ。

マクロ経済の視点で最も危惧されることは個人消費が心理的に萎えることだ。これまで減税措置などでかろうじて支えてきたが、豚コレラ発生による物価高が庶民生活を圧迫していた。自動車販売も前年比で落ち込みが続いている。米中貿易戦争の煽りでリストラ・工場閉鎖も相次ぎ、春節に実家にも帰れないほどの経済困窮者たちの存在も話題になっていた。そこに追い打ちをかける如き事態の急変だ。

習近平政権としても香港・台湾問題と同時進行で新たな難題を抱えることになった。

もはや経済の構造改革優先を唱える余裕はない。米中合意に明記された「知的財産権保護」、「技術の強制移転」を本気で規制すれば、国営企業以外の多くの中小企業は忽ち現場の業務が立ち行かなくなる可能性がある。それほどに合規(コンプライアンスの中国語)意識が希薄なビジネス環境である。

日本への影響も懸念される。既に多くの中国人観光客が大挙来日している。新幹線内のアナウンスがまず中国語から始まり、見渡せば車内の乗客の大半は中国人。昨日筆者が実際に体験したことだ。

不安感を煽る事態は是非ともに避けねばならないが、個人も企業もリスク管理は意識する必要があろう。

NY株価は最高値更新が続き高値警戒感が強まった矢先で、日本株も上値がやや重く感じられる市場環境だ。ヘッジファンドは利益確定の口実として囃している感も否めない。

サーズほどのマグニチュードではない可能性が強いが、つい2週間ほど前の年初2020年見通しでは全く想定されていなかった事態ゆえサプライズ感は強い。

金価格は1550~60ドル台で膠着している。

今日の写真は京都のお茶席専門の「三友居」の東京にある高輪店。やはりお茶席専門だが店も構えている。東京でホンモノの京料理を味わえる貴重なところ。

鯛のアラと季節の大根などの土鍋煮込み。素材の味が沁みて暖かい。そして琵琶湖のアユの稚魚と辛い大根の組み合わせが心地よい一品。気に入った(笑)。

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2020年