豊島逸夫の手帖

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金価格1800ドル射程内に

2020年6月24日

金国際スポット価格が1770ドル台まで切り上がってきた。
昨日のレンジは1746~1771ドル。
ほぼ高値引けと言える。
NY金先物価格で指標となる8月ものは1776ドル。
但し、昨日の金急騰は説明に困る上げだ。

昨日のマーケット全体のムードは、経済再開楽観論が支配的であった。
欧州・米国のPMIが依然低い水準ながらも改善傾向顕著。
米国新規住宅着工件数も事前予測を大きく上回った。
ワクチン開発についても米国最大権威ファウチ氏が議会証言で、年末から年初を目指し期待できると発言。
ダウは131高。安全資産の出番とは言えない市場環境だ。
株高、金高は今や普通の現象ではあるが。
問題はドルと金利。

まず、景況感好転となると金利は上昇。金利を生まない金には逆風。
外為市場ではドル安。これはドル安=金高でセオリー通りに見えるが、問題はドル安の理由。経済楽観見通しの中でリスク許容度が高まり、リスキーな通貨(新興国通貨やユーロ)が買われている。その結果としてドルが売られた。NY市場ではドルが安全通貨とされるので、そのドルが売られるのに安全資産の金は買われるという現象も指摘できる。因みにドルと円という二つの安全通貨のレートはドル安・円高に振れた。このドル・円の通貨ペアは常に二つの安全通貨が安全性を競う展開。

いずれにせよ昨日に関する限り、ドルや金利の動きでは説明できない金高となっている。
結局第二波懸念とFRBの未曽有のマネー供給という二つの根源的要因に尽きる。
あと「実質」金利がマイナスという要因も無視できない。今や2022年までは米政策金利は「名目」ゼロ金利。一方、米国消費者物価上昇率はコアでプラス1.2%。ということは「実質金利」はマイナス1%程度ということになる。預金していても目減りするだけゆえ、マネーは実物資産に向きやすい。その実物資産の中で不動産がコロナ禍で落ちた。残るは金ということになる。

なお、昨日本欄に書いたナバロ問題発言だが、その後撤回され、トランプ大統領も米中貿易協議が終わることはないと確認ツイートして落着した。なんとも人騒がせな出来事で、アジア時間で起こったが、NY市場でもトランプ政権の内部混乱として注目された。

さて、随分と高い価格水準まで来たが、高値圏が大統領選挙まで続くとの見通しに変わりなし。1700ドル以上は需給ジャブジャブゆえ、バブルとの見方にも変わりなし。このバブルは逆U字型で高原状態が11月までは続きそうとの見方も変わりなし。

 

2020年