豊島逸夫の手帖

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有事の金か有事のドルか

2020年4月2日


コロナショックでドル資金が世界的に足りなくなりました。いつまでこういう異常な状態が続くのか分からず、そもそも新型ウイルスの正体も分からず。その間モノとヒトの流れは分断される。このような想定外の状況に置かれると、ドルをとにかく多めに手元に置いておこうという自己防衛心理が世界的に顕在化したのです。ドル資金を調達するためには多少のプレミアムを払っても構わないというのです。ドルの発行元FRBもいくらでも必要なドルは供給しますよという態勢を敷きました。
いざという時の決済手段としては世界的に通用する米ドルが選好されるのですね。


では有事の金はどうなのでしょうか。
金はそれ自体でモノが買えるわけではありません。しかし長期的に保有する資産としてみれば、紙幣のドルより現物の金の方がはるかに頼りになりますよね。だからこそ外貨準備として大量の金が中央銀行に保有されているわけです。平たく言えば「紙くずにはならない」無国籍通貨ということになります。一方でドルはさすがに紙くずになることはないでしょうが、印刷された額面の実質的価値が国の信用が落ちると急激に下がってしまいます。特にトランプ大統領の時代になりドルの信頼性が揺らいでいます。


かくしてフローで見ればドル、ストックとしてみれば「金」に軍配が上がります。
有事のドルか有事の金かではなく、有事のドルも有事の金も必要ということでしょう。


さて、足元の国際金価格は1600ドルを下回る水準で推移しています。1700ドルを見たので「下がった」と感じますが、昨年の価格水準からは随分と切り上がってきました。

あまり難しく考えずに(どうもやたらに理屈っぽい人も少なくないのですが)、コロナショックのような思いもしなかった危機が人類を直撃する時代だからこそ、金を資産として保有する意味があるのだと考えるべきです。


最後にエピソードをひとつ。知り合いの著名アナリストが見事な世界経済についての論文を私に送ってきました。さすがーと思って読んでいたら最後に一言「それで、私はどうすればよいのでしょうか、ご教示ください。」だと(笑)。実態はそんなものですよ。

2020年